2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J01421
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久保田 裕次 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 日本近代史 / 政治外交史 / 東アジア国際関係史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も国内外で積極的に史料調査を行った。特に海外での調査に関して、イギリスではSchool of Oriental and African Studiesで香港上海銀行の支配人を勤めたアディス(Charles Stewart Addis)の私文書を、National Archivesでイギリス外務省の文書を閲覧した。また、アメリカでは、第一次世界大戦を契機に東アジアでの金融的影響力を高めたモルガン商会に関する史料調査を、当該期において同社の責任者であったラモント(Thomas Lamont)の私文書が保管されているHarvard University Baker Libraryで行った。一方、国内でも積極的に史料調査を進めた。国立国会図書館憲政資料室で「憲政資料」など、九州国際大学で「製鐵所文書」の閲覧・複写を行った。 次に、論文執筆・掲載や学会での報告状況について説明する。「第一次世界大戦期における対中国経済外交と商業会議所」(『渋沢研究』27、2015年1月)や「寺内内閣期における対中国借款政策と勝田主計」(『史学雑誌』121-3、2015年4月)によって、寺内内閣期の対中国借款について「西原借款」に注目してきた先行研究の相対化を目指した。また、「六国借款団と日本―外交・金融関係者の「支那保全」論を中心に―」(『歴史学研究』930、2015年4月)では、列強の利害調整機関であると評価されてきた六国借款団について、日本国内の外交・金融関係者が唱えていた「支那保全」論から再検討を試みた。以上と同時に、様々な分野での学会発表も積極的に行ったが、特筆すべきは、中国の国際学会で招待報告を行い、日本における漢冶萍公司・盛宣懐研究の現状と課題について発表したことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず第一に、歴史資料の収集についてである。これまで調査実績のあるイギリス外交関連の史料に加え、金融関連の香港上海銀行に関する史料の調査を行うことができた。さらに、第一次世界大戦期の日本の対中国借款に関するアメリカ外交・資本の動向を検討することを課題に掲げたが、そのなかで重要な役割を担っていたモルガン商会に関する史料調査も実行した。この史料が所蔵されているHarvard University Baker Libraryで所蔵状況を把握し、調査方法などを習得できたことは、もちろん大きな成果であるが、所蔵史料をどのように本研究に組み込んでいくかということに関しても、方向性を定めることができたと考えている。つまり、本年度の調査は英米双方の動向を検討するための基礎的な作業となったといえよう。 第二に、調査研究の成果についてである。①論文の発表に関しては、本研究の基礎をなす論文が相次いで査読付き学会誌に掲載された。第一次世界大戦以前の対中国借款に関する先行研究の枠組みを相対化することを目指した内容であり、いずれも高い評価を受けている。これらの成果によって、本研究を近代日本というより広い視野から捉えることが容易になったといえる。②国内外で積極的な学会報告を行った。本研究は主に政治外交史的視野に基づいた研究であるが、密接な関わりを持つ分野である経済史の学会において、本研究の成果を報告する機会を得た。また、研究対象となっている中国の国際学会で招待報告を行う機会を与えられ、日中間の学術交流を進め、研究の国際的な発信を行うととともに、本研究の主張や論理をより明確していくための重要な経験となった。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、引き続き積極的に歴史資料の調査を行うが、特に①アメリカでの調査、②日本国内に所在している史料の調査に取り組む。①に関しては、今年度に実施した調査の成果に基づいて、第一次世界大戦期のアメリカ外交・国際金融に関する調査を行う。その際、第一次世界大戦を契機とした、東アジアにおけるアメリカのプレゼンスの上昇や英仏との関係を念頭に、分析を進めていきたい。さらに②に関しては、これまで各資料保存機関などに所蔵されている整理済み史料の調査に終始してきたが、来年度は未整理の史料に関しても、積極的に閲覧の機会を求めてきたい。 第二に、研究成果を積極的に公表する。本年度もいくつかの学会誌に論文を執筆したが、今年度は日本史以外への投稿を目指す。特に、経済史、国際政治史、中国近現代史の分野の学会誌に論文を投稿するなかで、学際的な研究も進めてきたい。また、研究の海外への発信を行うために、英文もしくは中文雑誌に研究論文を投稿することも視野に入れたい。 第三に、本研究のまとめを行う。今年度が本研究課題の最終年度にあたる。そのため、第一次世界大戦期の対中国借款に関するこれまでの分析の成果を単著にまとめることができるよう、隣接分野の研究者からの助言や指導を得ながら、論点やコンセプトを絞り込むことを目指したい。
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Research Products
(6 results)