2013 Fiscal Year Annual Research Report
擾乱期の芸術思想:フランシス・ポンジュの同時代絵画言説の射程をめぐって
Project/Area Number |
13J01426
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
太田 晋介 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フランシス・ポンジュ / 文学と絵画 / 両大戦間・戦後思想 / 詩学・制作学 / 作者の死 / 活字配置 / 国際情報交換 / フランス |
Research Abstract |
大戦直後40年代に着手されたフランシス・ポンジュの美術批評の中に、同時代の実存主義思想の影響を見据えながらも、作家固有の思想を読み込みその実体を解明することが本研究の目的である。本年度は以下の作業・考察を行った。基礎作業として、国内およびフランスの研究機関で当時の芸術、とりわけ絵画に関する文献資料を調査し、両大戦間期の芸術思想について広く理解を深めた。得られた着想を作家の静物画論の考察としてまとめあげ、2013年6月に開催された日本フランス語フランス文学会で口頭発表を行った。査読審査の結果、発表については論文の受理には至らなかったものの、掘り下げるべき多くの事柄が浮き彫りとなった点で少なからぬ成果であったと確信している。並行して、作家の初期テクストの生成について考察し仏語論文にまとめた。その際、『新フランス評論』誌や『緑の円盤』誌といった作家の思想形成に寄与した文芸誌についても限定的にではあるが調査した。この論稿を、視点を共有する昨年度発表した論稿とその関連資料に接続し改めて考察した結果、造形芸術との対話を通して、作家は自身の詩学の根本命題である創作衝動をめぐる問いの探求を試みているという視点を得るに至った。確かに、この衝動・欲望という主題はシュルレアリズムあるいは精神分析学の領野と第一に切り結ぶ。その一方で、それらとは異なる視点からこの問題が論じられる理路が存在することが行った文献資料の読解から判明した。ポンジュと言う作家において特筆すべきは、この主題が内と外から複眼的に捉えられている点である。つまり、一方では「創作を促される/欲する私とは何か」という主体の問いとして、他方では「芸術の起源とは何か」という「構造」の問いとして創作衝動のテーマは作家の批評言説で語られている。今後は画家フォートリエと表意文字(イデオグラム)をテーマに取り上げることで考察を発展させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文学と造形芸術(主に絵画)、双領域に関する膨大な数の資料を博捜した上で問題設定に沿った文献を精選することが本研究の課題点の一つである。今年度、フランス現地で調査を行った結果, 書誌的な面で期待以上の進展があった。これにより、理論的な面でも個々の問題設定がより精緻、具体的なものとなった。よって次年度、さらに踏み込んだ精査と考察を行うべき文献資料の目星をつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の作業を継続しながら、得られた着想を口頭発表や雑誌論文の形で具体化していく予定である。今後は、手元にある資料の読解からえられた現時点での着想の整理にまずは着手したい。とりわけ本研究に深く関わる、ポンジュが参照した精神医学博士B. Logreのルクレティウス論について、S. Ballestra-Puechの考察を参照しながら、見解をまとめたい。その後に長期休暇を利用し、作家の草稿・書簡などについて文書館などに本格的にアクセスすることを見据えている。これらの作業を通じ、ポンジュにおける創作衝動のモチーフが、作家の美術批評のみならず、「アトリエ」「変奏曲」といった術語に代表される、作家の詩学・制作学の結節点であることの論証を試みる。
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Research Products
(2 results)