2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01433
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 伸一 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 亀裂 / 乾燥破壊 / 確率過程 |
Research Abstract |
我々は乾燥破壊パターンの統計的ダイナミクスに関する研究を行っている。これまでに実験において終状態のパターンの報告がほとんどであったが、実際はその統計的性質は乾燥の進行と共に変化する。乾燥破壊の時間発展の統計的性質を調べる事は破壊の予測・制御の面で重要な知見となる。我々は連続体シミュレーションにより、乾燥破壊パターンの破片分布の時間発展を調べ、その時々刻々と変化する破片分布は平均面積の時間発展のみでスケールできる事を示した。これを我々は破片分布の動的スケーリング則とよんでいる。これは破片分布の時間発展の性質は平均面積の時間発展の性質にすべて集約されている事を意味する。 本年度で、我々はこのスケーリングの理由の確率モデルの解析による模索と、実際の乾燥破壊において破片分布の動的スケーリング則が観測されるかどうかの実験を日本大学で行った。前者では、マルコフ化した確率モデルのマスター方程式を導出し、スケーリング解析から、収縮により内部で増加する応力が時間のべキ関数であれば動的スケーリング則がペーストの物性パラメータによらず普遍的に成り立つ事が分かった。後者では、炭酸カルシウムの粉末と純水の混合ペーストを使って、粉の体積分率を系統的に変化させて乾燥破壊させて実験を行った。炭酸カルシウム粉末ペーストは乾燥前に揺すった方向を記憶するという性質を持つ事が知られている。揺すった後に乾燥させると、最初に揺すった方向に垂直に層状な亀裂が生じ、その後あみだ状に亀裂が生ずる。揺すらないで行った実験では、初期の亀裂イベントで亀裂が終状態となってしまい、破片の分割過程を観測する事が困難である事が分かった。揺すった実験での層状亀裂後に発生するあみだ状亀裂では亀裂発生イベントが比較的遅く、破片分割過程を観測できる事があった。この時は破片分布の動的スケーリング則は成立している事を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論解析は十分に行えたが、実験はサンプル数が少なく十分な解析が行えなかった。しかし系統的に炭酸カルシウムの乾燥破壊の性質を調べる事ができたので、この評価とする。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は当該年度で行いきれなかった実験を行う。炭酸カルシウムだけでなく、コーンスターチ等でも動的スケーリング則が成り立つかを確認する。理論計算においては、破片形状の扁平を考慮した確率モデルの計算を行い、より定量的な実験との比較を可能にしていく。
|
Research Products
(5 results)