2014 Fiscal Year Annual Research Report
含窒素複素芳香環化合物の直接的不斉水素化反応による光学活性環状アミンの効率的合成
Project/Area Number |
13J01445
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
飯室 敦弘 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 不斉水素化 / イリジウム / イソキノリン / ピリジン |
Outline of Annual Research Achievements |
含窒素芳香環化合物の塩酸塩を基質とする触媒的不斉水素化反応における反応機構解明 キラルな環状アミン骨格は天然物など様々な生理活性化合物に見られる重要な骨格であるため、その効率的合成法の開発が求められています。含窒素芳香環化合物の触媒的不斉水素化反応はキラルな環状アミンを得る最も直接的な方法であると考えられますが、含窒素芳香環化合物はその安定性のために反応性が低く、生成物アミンによる触媒の失活が起こるため、窒素上イリド形成や窒素原子上のベンジル基の導入が不可欠でした。しかしながらこれらの手法では不斉水素化後に脱保護が必要であるという改善点が残されていました。一方、本研究員はこれまでの研究により、イソキノリンおよびピリジンの不斉水素化反応において基質をハロゲン化水素酸塩へと誘導することで反応性およびエナンチオ選択性の向上に成功しました。反応性が向上する理由に関しては、生成物である塩基性の高いアミンを酸により補足することで触媒の失活を抑えているという知見を得ていましたが、エナンチオ選択性が向上するメカニズムに関しては不明瞭でした。そこで1H および 31P NMR 測定により反応中間体の補足を試みたところ、イソキノリン塩酸塩由来の塩素アニオンは触媒のイリジウム中心に相互作用し、アニオン性イリジウムヒドリド錯体を形成することや、塩化物イオンを介した六員環遷移状態を経てヒドリド攻撃が進行する新たな反応機構を支持する結果を得ました。この成果の一部は学術論文に発表し、表紙絵にも選ばれました。 [研究発表参照: “Enhancing Effects of Salt Formation on Catalytic Hydrogenation of Isoquinolinium Salts by Dinuclear Halide-Bridged Iridium Complexes Bearing Chiral Diphosphine Ligands,” Chemistry A European Journal, 2015, 21, (5), 1915-1927.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題のコンセプトの一つである、ハロゲン化水素酸添加による触媒活性およびエナンチオ選択性の向上効果に関する反応機構解明に成功し、その成果の一部を学術論文ならびに特許として発表できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
困難であったピリジンの直接的不斉水素化反応の開発に成功したものの、反応条件の過酷さ、および触媒量が多く必要であるという課題が残されている。触媒量が多く必要な理由として触媒の失活種であるイリジウム-ヒドリド架橋二核錯体の生成が主たる原因と考えている。触媒の失活を抑えるような触媒設計ができれば、より効率的な触媒反応の開発ができると考え、新規不斉水素化触媒の開発を行っている。最近になって金属塩化物のような Lewis 酸を用いても塩化水素酸と同様の結果が得られることがわかってきており、金属イオンの徹底的スクリーニングを行うことにより触媒の失活を抑え、より高活性な触媒系の開発およびそれを応用した全合成への展開を狙っている。
|
Research Products
(5 results)