2013 Fiscal Year Annual Research Report
超大規模数値シミュレーションで探る銀河進化とダークマターハローの力学構造の関係
Project/Area Number |
13J01455
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
扇谷 豪 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ダークマター / 矮小銀河 / 銀河形成 / 銀河進化 / GPU / 大規模シミュレーション |
Research Abstract |
コールドダークマター(CDM)宇宙論は宇宙の構造形成理論のパラダイムである。しかし、CDM宇宙論の理論予測と観測結果の間にいくつかの深刻な矛盾が指摘されている。それらは主に矮小銀河等の小スケールで議論されている。その一つが、コアーカスプ問題と呼ばれるダークマター(DM)ハロー中心部の質量密度構造に関する問題である。本研究では、銀河内で起こった爆発的星形成後の多数の超新星爆発によって駆動される銀河ガスの重力場変動を考え、重力相互作用によってDMハローへと与えられる影響を独自に構築した理論モデルと大規模な数値シミュレーションを駆使して調べている。また、より大規模な数値シミュレーションを高速に行うため、演算加速器として注目されるGraphics Processing Unit (GPU)を用いたコードの開発も行っている。本年度の成果は大きく分けて以下の3点である。 1. 本年度は、前年度までに構築した理論モデルを発展させ、コアーカスプ問題の解決条件を定量的に議論した。結果は国内外の学会で発表し、学術誌Astrophysical Journal誌にて査読中である。今後は当初の計画通り、観測データとの比較を通してモデルの妥当性を詳細に議論する予定である。 2. 前年度までに独自に開発した、GPUクラスタ向けN体シミュレーションコードの内容をまとめ、情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS)に採録された。また、そのコードの流体力学を扱う粒子法の一種Smoothed Particle Hydrodynamics法への拡張も行った。今後はさらなる計算規模の拡大のため、並列化効率の向上をめざす。 3. 近年、DMハローに関する観測的経験則が報告されている。CDMシナリオに沿ってDMハローが形成され、カスプからコアへと質量密度構造が遷移したと仮定して解析を行い、観測結果と比較した。その結果、観測的経験則がよく再現されることを示した。この結果は、学術誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Society : Lettersに採録された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であった、超新星爆発に対する銀河ガスの振る舞いの銀河形状への依存性に関しては、前年度までに一定の理解ができているため。加えて、当初の予定にはなかったDMハローの観測的経験則とカスプからコアへの遷移シナリオとの関係を調べ、結果は学術誌に採録されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
DMハローの観測的経験則とカスプからコアへの遷移シナリオに関して共同研究を行った、ドイツLudwig Maximilians Universität München、及び、Max Planck Institute for Extraterrestrial PhysicsのA. Burkert教授の元に1年間滞在し、共同研究を行う。当初の予定通り大規模シミュレーションを用いて銀河とDMハローの進化の関係を詳細に調べる。
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Research Products
(6 results)