2013 Fiscal Year Annual Research Report
福祉国家再編期の高度技能移民政策:国境を越える専門性とメンバーシップの再定義
Project/Area Number |
13J01488
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
日野原 由未 中央大学, 大学院法学研究科, 特別研究頁(DC2)
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Keywords | 福祉国家 / 移民 / 社会的包摂 / ニュー・レイバー / NHS / ワークフェア / 移民政策 / 外国人医師 |
Research Abstract |
本研究課題に取り組む上での目的は、第一に、高度技能移民政策の個別の事例として、NHSなどの公共セクターで働く移民の雇用政策について検討することであり、第二に、高度技能移民という新たな潮流の移民の受け入れが福祉国家にもたらす意義を明らかにすることであり、第三に、高度技能移民という専門性を有するヒトの移動がもたらす、国境を越えた専門性のコントロールというイシューから、国境を越える専門性の管理に伴う問題について考察することである。 こうした目的の下、平成25年度は、とりわけ第一、第二の目的を遂行するための研究活動を行った。イギリスの公的医療制度であるNHSの下で就業する医師を支える組織である外国人医師会へのヒアリングを実施し、外国人医師会の役割や、他の組織との関係を把握する作業を行った。外国人医師会の内情に関しては研究蓄積がなく、彼らがどのような活動を行っているのかを知る術はごくわずかであった。組織のウェブページや公開されている資料からは知ることができなかった、英国医師会との関係や組織の具体的な活動についても、ヒアリングを行うことで知ることができた。 論文としては、「ニュー・レイバーのワークフェア改革と移民政策・高度技能移民を中心とした社会的包摂の展開」を執筆した。本論文では、イギリスのブレア労働党政権下で福祉国家改革として行われたワークフェアが同時期の移民受け入れ政策と移民の社会的包摂にどのような影響を与えていたのかを検討した。本論文では、移民を対象とした福祉国家論にとどまらず、現代の福祉国家の再編の手だてに内在する課題や新たな福祉国家のあり方についても提起する作業を行った。本論文の執筆は、研究課題の中心的なテーマでもある国境を越えたメンバーシップや連帯概念の醸成を明らかにする上で重要な作業であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を遂行する上での3つの目的について、第一のNHSにおける移民労働者の雇用について、ステークホルダーの整理やその配置について理解する作業を行い、第二の高度技能移民の存在が福祉国家にもたらす変容については論文のなかでその考察を行った。当初予定していた計画に沿って研究を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の第三の目的である、移民の出入国管理と専門性の管理をめぐる議論について、本年度の研究のなかで明らかにしていく。加えて、第一の目的であるNHSにおける高度技能移民の雇用政策についても、昨年度は資料の収集やヒアリングによる情報の入手など、成果を提示する前段階の作業にとどまったため、本年度はこれをもとに、成果として学会発表で報告することで、研究課題の遂行に努める。NHSにおける外国人医師の雇用に関する研究成果を提示することで、福祉国家サービスの供給、あるいは公共セクターのサービス供給において、もともとは想定されてこなかったアクターである移民を積極的に取り込むことに、どのような意味合いや論点が見出されるのかについても明らかにし、研究計画に沿った研究の遂行を進める。
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Research Products
(1 results)