2013 Fiscal Year Annual Research Report
カンボジア教育史の再構成:シハヌーク期からヘン・サムリン期を生きた教師の語りから
Project/Area Number |
13J01515
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
千田 沙也加 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 国際研究者交流 / カンボジア / 教育史 / ライフヒストリー |
Research Abstract |
本研究は、フランスからの独立(1953年)以降、カンボジアの学校教育制度は幾度も変遷しており、教師たちの聞き取り調査を中心に、教師たちによって生きられた教育史として、カンボジアの近代教育の意味と変容を考察することを目的とする。本研究では、1. カンボジアでの現地調査、2. 文書記録・先行研究の検討、3. 研究成果の公開・発表、の3つを主な取り組みとして進めている。教師たちを対象としたライフヒストリーの聞き取りを現地を用いて実施し、現地語で語られた歴史を翻訳し、生きられた歴史として記述しようとする試みが本研究の独創的な点である。本研究は、カンボジアの教育史において、教育制度の変遷や社会の変化に対する学校現場の適応や葛藤をめぐる取り組みの詳細な記述をめざすものであり、先行研究が少ないカンボジア教育研究の中で学校教育史の空白を埋める意義があると考えられる。 平成25年度は2度の現地調査を実施した。現地調査では、(1)カンボジアでの小学校および中学校、教員養成校教師に対するライフヒストリーの聞き取り(合計29名)、②カンボジアの教育省での教科書、カリキュラムに関する文書記録の収集、③現地語の先行研究等の収集(現地私立大学での独立以降の教育史に関する修士論文2件、修士論文の抜粋1件)を得ることができた。以上の現地調査で得られた情報の整理と、これまで欧米を中心に行われてきた先行研究との検討を進めているところである。研究成果の発表に関してはまだ十分ではなく、一部を6月のカンボジア研究会で発表したにとどまっている。次年度は得られた成果を、学会での発表、学会誌等への投稿を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は2度の現地調査によって、教育現場の教師たちのライフヒストリーに加え、カリキュラムや教科書、現地語の教育史研究に関する資料等、様々なデータを収集することができた。加えて、先行研究の検討、成果の発表もある程度進めることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、聞き取り調査の結果からライフヒストリーの相対化を行い、学校教育現場の実像の把握をしたいと考える。加えて、得られたカリキュラム等の政策に関する資料の翻訳を行い、教育現場における教師の思想と行動の背景にある具体的な教育政策を明らかにする。また、現地語の教育史に関する修士論文等の研究から、先行研究としての把握、聞き取り調査のデータの裏付けを行うとともに、カンボジアにおける教育史に対する認識を検討する。データの検討を進める中で不足があれば追加で現地調査を実施する予定である。
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