2016 Fiscal Year Annual Research Report
カンボジア教育史の再構成:シハヌーク期からヘン・サムリン期を生きた教師の語りから
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13J01515
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
千田 沙也加 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カンボジア / 教育史 / ライフヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目的であるカンボジアの教育史の再構成を達成するため、平成28年度は大きく分けて以下の3つ、①一次史料である機関紙『カンプチア』の検討と、②これまでの現地調査で収集した聞き取りデータ及び教師のライフヒストリー分析、③文献のレビューを行った。 1点目に関して、政権側が発行していた機関紙『カンプチア』の教育に関する記事から、教育政策の要点と、プロパガンダとして教育活動がどのように表象されているかを検討した。その結果、教育分野が国の発展の象徴として表象されていたことや、これまで教育政策の対象とされてこなかった少数民族や、重要視されてこなかった女子教育に力をいれている様子が表出されていたことを明らかにした。これらの成果は6月に行われた「日本カンボジア研究会」と「日本比較教育学会第52回大会」において口頭発表として公表した。 2点目に関して、これまでに収集した聞き取りデータと教師のライフヒストリーを整理し分析を行った。教育経験の異なる教師たちが新しい社会体制の教育政策をいかに認識し、いかに実践したのかを明らかにした。教師のライフヒストリーから、ポル・ポト政権期後の教師は学歴が低く、質の低い教師たちだったとされてきたが、一時期であれ、高学歴の教師が含まれていたこと、そしてそういう全ての教師を含みこんで自己規定されてきたことを明らかにした。この成果は11月に行われた「国際教育研究フォーラム/第三世界の教育研究会合同研究会」で発表し、論文にまとめて投稿中である。 3点目である文献レビューに関して、本研究の分析・考察、研究の意義を深めるために解釈学の文献レビューを行い、また比較教育学の中でも重要な位置を占めるようになった国際教育開発の文献などの文献レビューを継続して行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの地道な研究の基礎作業を通して、博士論文の枠組みが固まりつつある段階である。先行研究において未開拓であった一次資料の発掘・分析、現地調査によるデータの収集を継続しており、研究はおおむね順調に進んでいる。年間を通して、学会発表や研究会への出席、他研究機関での資料収集等、多様な研究領域の研究者との交流を積極的にもち、自らの研究のオリジナリティを確立しつつある。
同時に、執筆作業も進めており、学会誌への投稿も積極的に行った。来年度中に主要学会の学会誌に査読論文が採択されれば、加速度的に研究も前進すると思われる。引き続き、現地資料の翻訳・分析に加え、精力的に執筆作業を進める予定であり、ほぼ期待通りの研究の進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は収集したデータを成果としてまとめ公表することが中心となる。
そのため、現時点で不足していると思われるデータに関する現地調査は今年度の初旬に収集し終え、データをまとめて6月の比較教育学会での発表、及び投稿論文としてまとめて公表する。
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