2013 Fiscal Year Annual Research Report
移動に基づく意味的類型論の拡張 -状態変化表現の通言語的考察-
Project/Area Number |
13J01521
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊藤 彰規 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 移動表現 / 状態変化表現 / 認知言語学 / 類型論 / 結果構文 / 使役移動 |
Research Abstract |
本年度の研究活動は主に以下の2点である。 ■修士論文における研究成果の精緻化及びその発表 修士論文で行ったput型使役移動表現の研究成果を精緻化し, またその成果を発表した。特に状態変化表現にも関連する点としては, イベントごとに異なる類型が必要になる場合があり, 新たな類型とTalmyが元々提案している類型とを含意的普遍性で関連付ける必要があることを提案した。また, Talmyがsatelliteと呼ぶ要素で表すことができる経路は限定的であり, その範疇を超える場合は動詞で経路を表す場合があるということを示した。成果物として2件の発表と1件の論文がある。 ■Talmy類型論における状態変化表現の扱いについての理論的考察 本研究の理論的基盤となるTalmyの理論における状態変化表現の扱いを考察し, 問題点を洗い出した。具体的には, Talmyが問題にしている状態変化が節内のどの要索で表現されるかという観点ではなく, 連続した事象が単一節で表現される場合に「最終的な」状態変化(あるいは結果)がどの要素で表現されるかという観点で言語を分類すべきであるという点である。 このように, Tatmy類型論を「事象の連鎖を単一節でどのように表現するか」という観点で捉えなすことで, 結果構文のタイポロジーとの親和性が明らかになった。具体的には, 結果構文のタイポロジーにおけるStrong/Weak Resultativeの分類と, 移動表現における移動様態動詞と着点句との共起という現象を関連付けることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Talmy理論における状態変化表現の扱いについて理論的な問題があり, 最終的にどのような理論化を目指して研究を行うかという点を考察するのに時間を割いたため, 実際にデータを得る段階まで進められなかったという点では多少の遅れは見られるものの, 理論的な考察から得られた点も少なくなく, 総合して概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」の項目で述べたとおり, 本年度では実際にデータを得る段階まで進展しなかったため, 来年度以降はデータを早急に取り, 経験的なデータに基づいて議論を更に発展させて行く。
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