2014 Fiscal Year Annual Research Report
移動に基づく意味的類型論の拡張 -状態変化表現の通言語的考察-
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13J01521
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊藤 彰規 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 移動表現 / 状態変化表現 / 類型論 / 結果構文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,英語の状態変化表現をTalmy類型論の観点から考察することを中心に研究を行った。具体的には,British National Corpusを用いて,英語の状態変化表現に関して数量的な調査を行い,その結果と移動表現の類型論で明らかになっている知見を参考に,移動表現と状態変化表現の異同を考察した。その結果,次の2点が明らかになった。(i) 英語の状態変化表現において,コアスキーマ(状態の変化)と共イベント(状態変化を引き起こす手段など)が統合される場合,移動表現と同様に付随要素枠付言語型の表現パターンが好まれる。(ii) 移動表現においては基本的にコアスキーマ(移動の経路)と共イベント(例えば様態)は統合的に表現される一方,状態変化表現においては,コアスキーマ(状態の変化)と共イベント(手段)は統合されて表現される場合は少なく,むしろ状態変化が単体で表現される非統合的表現が多い。 特に2点目に関して,統合的表現がどの程度好まれるかという点はTalmyの理論では考慮されていない点である。Talmyの理論では移動表現と状態変化表現の表現パターンは平行的であるという想定があった。しかし,実際は移動表現と状態変化表現では統合的表現を用いる度合いに差が見られ,状態変化表現において統合的な表現を用いるのはごく僅かなケースのみであることがわかった。このことから,Talmyの理論は状態変化表現における表現パターンのごく一部しか捉えていないということが言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
状態変化表現と移動表現の比較のために,コーパスデータに基づき両者の比較を行い,異同を明らかにできたため,当初の目的を踏まえると,順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はデータを英語に限定して収集したため,通言語的な考察を行うために他の言語のデータを収集する必要がある。また,移動表現のデータを同様に収集し,比較を行う。
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