2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01590
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 理史 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員〔DC2〕
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Keywords | 政治社会学 / 社会階層論 / 大衆政治 / 投票行動 / ポピュリズム / 地方政治 / 首長選挙 / 地域調査 |
Research Abstract |
申請者は、1990年代以降の新しい地方政治の流れの中に、「政治における第二の近代化(有権者の社会経済的地位と支持政党・投票行動の関連が希薄化し、流動化すること)」を見出した。政治における第二の近代化では、有権者は自律した個人として政治にかかわることを求められ、その結果、人気主義的(大衆政治)、または反対に業績評価的(合理的)な投票行動を行うことが想定される。申請者は、政治における第二の近代化の典型的事例として、大阪における橋下徹と日本維新の会の躍進(橋下現象)に注目し、次の2つの研究を行った。まず【研究課題25-1】では、大阪市有権者4,800人を対象に自ら実施した「大阪市民の政治・市民参加と選挙に関する社会調査」のデータを用いて、2011年11月27日の大阪市長選挙における投票行動を、カテゴリカル・パス解析によって検証し、「大衆政治の理論」から説明できることを示した。次に【研究課題25-2】では、同様のデータを用いて、2011年11月27日の大阪市長選挙で橋下徹に投票し、2012年12月16日の衆議院選挙で日本維新の会に投票した大阪市有権者の特徴を、業績評価・将来期待、社会経済的地位、地域性の3点から多項ロジスティック回帰分析によって検証し、いずれの投票行動も限定的であることを明らかにした。申請者の研究は次の2点で重要である。第一に、研究者だけでなく論壇やマス・メディアの関心も集める橋下現象にいち早く注目し、自ら社会調査を実施し、実証研究を行った点である。首長選挙についての適切なミクロデータと研究の蓄積が不十分なため、先駆的な研究と考えられる。第二に、大衆政治の理論にもとついた仮説の検証を行い、1990年以降の新しい地方政治を、大衆政治の枠組みから理解する視点を提供した点である。以上より申請者の研究は、投票研究、政治社会学に貢献していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
達成度を諭文といつ点から考えると、【研究課題25-1】は、『ソシオロジ』第179号に査読有の論文として掲載(投稿から掲載まで最短6ヵ月)され、【研究課題25-2】も、分析・執筆は終了し、政治学系ジャーナルに投稿済(2014年4月)である。また関連して、自ら実施した2つの社会調査のうち、「大阪府民の政治・市民参加と選挙に関する社会調査」の概要は、『社会と調査』第11号に査読有の調査レポートとして掲載され、「大阪市民の政治・市民参加と選挙に関する社会調査」の概要も、調査レポートとして社会調査系ジャーナルに投稿済(2014年3月)である。以上より申請者の「研究の目的」の達成度は、「①当初の計画以上に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、【研究課題25-1】と【研究課題25-2】の結果が、第二の近代化において生じた理由を説明するため、戦後日本(第一の近代化時期を含む)における投票参加(階級政治)、投票外参加の長期的趨勢と、その規定要因の実証研究を行う予定である。具体的には、まず【研究課題26-1】で、「社会階層と社会移動全国(SSM)調査」と「社会階層と社会意識(SSP)調査」のデータを用いて、戦後日本(1955年~2010年)における有権者の職業階級と支持政党の実態(階級政治)の長期的趨勢を、対数乗法モデルによって検証し、その結果を歴史的・国際的に位置づける作業を行う。次に【研究課題26-2】で、「NHK・日本人の意識調査」のデータを用いて、戦後日本(1983年~2008年)における有権者の投票外参加の実態の長期的趨勢を、負の二項回帰分析によって検証し、個人化論や価値変動論(脱物質主義化)が予測したような投票外参加の増加がなぜ生じなかったのかを明らかにする。
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Research Products
(5 results)