2013 Fiscal Year Annual Research Report
ルイス酸触媒によるアミド結合活性化を鍵とするアミド化合物の変換反応の開発
Project/Area Number |
13J01616
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西井 祐二 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アミド / ボロン酸エステル / 加溶媒分解 / スカンジウム触媒 |
Research Abstract |
カルボン酸とアミンの縮合により得られるアミド化合物は、カルボン酸誘導体の中で最も優れた安定性を持ち、その切断を伴う変換反応には一般に、強塩基または強酸性条件下での長時間の加熱が必要となる。このような厳しい反応条件は、共存する官能基や分子構造そのものを損なう要因となるため、より温和な条件でアミド結合の切断を可能とする優れた触媒反応の開発に興味が持たれてきた。 私は新たにSc(OTf)_3触媒を用いたアミド化合物の加アルコール分解反応を開発し、ボロン酸エステルを触媒量添加することで反応性が顕著に向上することを見出した。本反応の基質適用範囲は1級アミドのみでなく、窒素上にアリール基を持つ2級アミドに対してもエステル化が進行し、アセチルアニリン類の脱保護反応としても応用可能である。従来の手法では塩化オキサリル等の取り扱いの難しい試薬を当量以上用いる必要があるのに対して、本反応はアドバンテージを有している。また、ホウ素化合物の添加効果の詳細について各種分光法から解析を行い、ポロン酸エステルはSc(OTf_3とアルコールの共存下において、3p^3構造を持つ新たな化学種を与えることが明らかとなった。この化学種はTHF-d_8溶媒中またはSc(OTf)_3を加えない条件では観測されなかったことから、スカンジウムがボロン酸エステルの酸素原子に配位することでホウ素原子のLewis酸が向上し、アルコール付加体が形成したと考えられる。更に^1HNMR, ^<13>CNMR測定から、Sc(OTf)_3はアミド化合物のカルポニル基に配位していることが確かめられ、またアミド化合物とボロン酸エステルは相互作用を持たないことが明らかとなった。NMR測定からの結果を総合すると、ボロン酸エステルとアルコール分子を含む6員環遷移状態をとって反応が進行すると推定でき、単純な組み合わせでありながら協働的触媒を示すという非常に興味深い結果が得られた。この反応形式は報告例が無く、優れた新規性に加えて他の触媒系に対しても応用可能であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホウ素化合物の添加効果の発見は当初の研究計画の予定外であったものの、興味深い研究成果として学術雑誌に掲載することができ、新たな研究テーマとしての発展も期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように予定外の研究成果が得られたため、ホウ素化合物を添加した触媒反応の応用性に関する検討に重点を置いて研究を進める予定である。具体的には、α, β不飽和カルボニル化合物に対する共役付加反応や、パラジウム等の遷移金属触媒を用いたアシル基とのクロスカップリング反応について検討していく。当初の実験計画については、文献調査や基質合成を平行して進めていくとともに、反応溶媒の選択や基質適用範囲などの情報を収集するために、予備的な実験を実施していく予定である。
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Research Products
(5 results)