2013 Fiscal Year Annual Research Report
高分子電解質による酵素超活性化現象を利用した新規診断システムの開発
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13J01620
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
栗之丸 隆章 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | タンパク質 / 酵素 / 高分子電解質 / 基質 / 活性化 |
Research Abstract |
高分子電解質を利用した酵素超活性化現象の有用性を示すことを目的として研究を進めた。これまでに、電荷の異なる基質と高分子電解質を共存させることで、α-キモトリプシンの酵素活性を大幅に増加させる現象(酵素超活性化現象)を発見してきた。例えば、正電荷の基質に対する酵素活性は負電荷の高分子電解質であるポリアクリル酸を加えることで増加し、負電荷の基質に対する酵素活性は正電荷の高分子電解質であるポリアリルアミンを加えることで増加した。本年度では酵素超活性化現象の原理を酵素反応速度論や動的光散乱法などを組み合わせて解明した。すなわち、高分子電解質が酵素の周りに局在することで、高分子電解質と基質の静電的な引力が働き、結果的に酵素と基質の親和性が向上したことが超活性化につながった。これらの知見は表面科学の専門誌であるLangmuir誌にて発表した。 酵素超活性化には電荷の異なる基質-高分子電解質の組が必要であると仮定し、別のモデル酵素で同様の実験を行った。その結果、トリプシンやスブチリシンでは酵素活性の増加が見られたが、ロイシンアミノペプチダーゼやエラスターゼでは酵素活性の増加が見られなかった。これらの結果は単純な電荷の組み合わせだけでは超活性化を実現できないことを示唆しており、今後新しい高分子電解質や基質をデザインする指針が得られた。さらに、高分子電解質の代わりにスペルミジンやスペルミンなどのポリアミンを用いたところ、α-キモトリプシンの酵素活性が増加することが明らかとなった。ポリアミンは腫瘍マーカーとして広く知られている化合物であるため、酵素超活性化現象を診断法へ応用する新しい切り口が見出されたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超活性化現象の原理を明らかにしたため、本年度予定していた異なる酵素を用いた超活性化系の開発がスムーズに進むと考えている。さらに、ポリアミンによる酵素活性化の発見という予想以上の知見が得られている。以上の理由から、次年度以降の研究計画の実現可能性が大いに期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では引き続き超活性化する酵素を探索することを目的に研究を行う。加えて、高分子電解質や基質のスクリーニングすることで、超活性化に適切な溶液条件をデザインする。昨年度に高分子合成の技術を習得しているため、高分子電解質をデザインする準備は整っている。さらに、ポリアミンによる酵素活性化についても詳細に調べていく。
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Research Products
(5 results)