2013 Fiscal Year Annual Research Report
「産み」の哲学的・倫理学的研究-生命論、他者論、フェミニズムを参照軸として
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13J01743
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
居永 正宏 関西大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | エマニュエル・レヴィナス / ハンナ・アーレント / ミシェル・フーコー / 子供 / 檜垣立哉 / 小泉義之 / 加藤秀一 / 死 |
Research Abstract |
本年度の主要な成果は、論文「「産み」の哲学に向けて(1)先行研究レビューと基本的な論点の素描」(『現代生命哲学研究』、大阪府立大学生命哲学研究所、2014年3月末刊行)である。 本論文では、まず「産み」という営みがこれまでほとんど哲学的に考察されてこなかったことを確認した上で、数少ない直接の先行研究だと考えられる、小泉義之『生殖の哲学』(主にミシェル・フーコーの思想に依拠)、檜垣立哉『子どもの哲学』(同じく西田幾多郎及びエマニュエル・レヴィナス)、加藤秀一『〈個〉からはじめる生命論』(同じくハンナ・アーレント)を、それぞれの依拠する思想家の著書を参照した上で批判的に考察し、それに基づいて独自の「産み」の哲学を素描した。特に、檜垣の言う「水平的他者」と「垂直的他者」の区別に着目し、檜垣自身がその区別を明確に理論化できていないことを指摘した。その上で、レヴィナスの「隔時性diachronie」の概念を独自に読み解くことで、「死」を規矩にして両者を「私がその死を見届けるもの」と「私の死後に生きていくもの」の区別として再構成する可能性を論じ、「産み」とは後者の「私の死後に生きていくもの」を生みだす営みであると主張した。 本論文は、「産み」の哲学的考察という新しい領域を拓く第一歩として、関連する思想家の議論をレビュー、批判した上で、「産み」の人間的意味を捉えようとする意欲的な試みである。特に、レヴィナスの思想とそれを主軸とした檜垣の議論を中心にした考察によって、「産み」を理解するには生命論と他者論を表裏一体のものとして把握しなければならないことを示した点に大きな意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
特別研究員PD初年度の昨年4月には博士論文の完成が間に合わなかったため、DCに資格変更を行い、同9月末の博士号取得及びPDへの再変更までは本研究課題と並行して博士論文の執筆・推敲を行っていた。また、博士論文の完成前後に一時期体調を崩して研究活動が多少滞った。
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Strategy for Future Research Activity |
「産み」の考察としては、予定通り、哲学文献の他に、研究の一つの柱であるフェミニズムの思想、またそこから派生する男性学の視点などへと広げていく。基本的な必要文献については、本年度の補助金により収集済みである。具体的な活動としては、昨年度あまり行うことができなかった関西大学生命倫理研究会などの研究会活動を活発化していく予定である。在外研究については、準備を進めるが次年度への延期も含めて研究の進捗を見ながら判断する。
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Research Products
(1 results)