2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01768
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
原口 知之 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 多孔性配位高分子 / スピンクロスオーバー錯体 / ナノ薄膜 / 人工超格子 |
Research Abstract |
多孔性配位高分子 : Fe(L)[M(CN)_4] (L ; 配位子, M=Ni, Pd, Pt) は温度に応答して低スピン(LS)状態、高スピン(HS)状態(反磁性 : S=0と常磁性 : S=2)間のスピン転移を示すスピンクロスオーバー錯体である。近年、このスピン転移は光、分子吸着、圧力などでも誘起されることが明らかとなり、こうした特性はメモリー材料やセンサーとしての応用が期待されている。外部刺激に対する応答性を調節する方法としては金属種・配位子を置換する方法が考えられ、この方法をナノ薄膜化の手法と合わせれば配位子場を精密制御することで応答性の調節が可能1になると予想される。本研究では、一層ごとの積層に優れたLayer-by-Layer法を用いることで、配位子を一層おきに変化させた人工超格子 : Fe(L, L')[M(CN)_4]ナノ薄膜(PCP-ASL)を作製し、その温度変化やゲスト分子の吸脱着1に対するスピン状態の応答性を評価する。様々なPCP-ASLについて外場応答性の知見を得ることで、機能性PCP-ASLの設計指針を創出することを目指している。本年度は4,4'-azopyridineや4、4'-bipyridineなどの配位子を用いてFe(L)[M(CN)_4]ナノ薄膜を作製し、結晶配向性の評価を行ったところ、X線回折測定の結果から結晶性の膜が得られたことが明らかとなっている。また、これらの配位子を組み合わせてPCP-ASLの作製を試みているが、現在のところ超格子構造は得られておらず作製条件についてさらに検討中である。一方で、pyrazineを用いた結晶配向ナノ薄膜1について吸着挙動の検討も行った。その結果、バルクでベンゼンに対して吸着を示すのに対して、結晶配向ナノ薄膜では吸着を示さないことが明らかとなった。現在のところ、この差異は細孔の配向に起因するものと推定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては、様々な配位子を用いてナノ薄膜の作製を行い、これらの配位子を組み合わせて人工超格子の作製を試みたが、現在のところ超格子構造は得られておらず作製条件についてさらに検討中である。一方で、pyrazineを用いた結晶配向ナノ薄膜について吸着挙動の検討を行い、バルクと異なる吸着挙動の観測に成功した。これらの成果については広く外部発表(日本化学会年会、UK-Japan Workshop、錯体化学討論会、分子科学討論会)を行なっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は他の配位子を含め、人工超格子の作製、スピン状態の評価をまず目標とする。また、Fe(pyrazine)[M(CN)_4]ナノ薄膜(M=Ni, Pd, Pt)についての実験結果を論文に執筆することを目標とする。
|
Research Products
(4 results)