2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01770
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石倉 丈継 北海道大学, 大学院情報科学研究科, 特別研究員(DC)
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Keywords | インジウム砒素 / 量子井戸 / スピントロニクス / 酸化マグネシウム / スピントランジスタ |
Research Abstract |
インジウム砒素量子井戸(InAsQW)への高効率なスピン注入とそのスピン輸送の解析を行った。以前、強磁性体(FM)であるコバルトからInAsヘテロ構造へのスピン注入の電気的な検出についてはすでに報告した。しかし、FM/InAsの界面抵抗とInAsのスピン抵抗との不整合により注入したスピンがバックフローされ、スピン注入効率が大きく抑制されていることがわかった。これは、FMと半導体界面に、高品質な酸化マグネシウム(MgO)又は、酸化アルミニウムでトンネル障壁薄膜(1~2nm)を形成し、その界面抵抗をInAsのスピン抵抗より十分大きな値へ制御することで対処できることが知られている。しかし、一般的な表面に露出した半導体チャンネル上にトンネル障壁薄膜を形成するのは容易だが、ヘテロ構造ではその高い電気伝導度を示す代わりにチャンネルが表面に露出されていないため、FMとトンネル障壁層形成時にチャンネルまでエッチングをする必要があるが、エッチングによる表面ラフネスがトンネル障壁薄膜の厚さより十分小さくし清浄な表面を得るのが課題であった。それに対し、インジウム燐をリン酸系のエッチャントで表面処理すると非常にフラットな表面を得ることができることから、InAs量子井戸チャンネル上部に薄いInP層を形成することで良質なエッチング後の表面を得ることを目指した。一方、トンネル障壁層は電子線蒸着(EB)による酸素欠陥の多いMgOが適しているとことが、トンネル磁気抵抗素子に関する研究で報告されていることから、EB蒸着法によるMgOトンネル障壁を用いた。上記の方法で試作したNiFe/MgO/InAsQW面内スピンバルブの界面における電気伝導特性は明瞭なトンネル特性を示し、良質な界面が得られていることが分かった。その界面抵抗はInAs QWへのスピン注入に対し理想的な値を示した。非局所スピンバルブ測定の結果、スピン注入効率は先行研究の4倍程度高い値を示し、InAs QWにおいても、適切なMgOトンネル障壁が有効であることを初めて実証し報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、先行研究より高いスピン注入効率を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
スピントランジスタに向けて、近似一次元チャネルにおけるスピン伝導とスピン歳差運動特性を評価。
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Research Products
(3 results)