2013 Fiscal Year Annual Research Report
ボトムアップ法による電子伝導性多孔性配位高分子の創成
Project/Area Number |
13J01778
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川口 玄太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電子伝導性 / 金属錯体 / 電子状態 |
Research Abstract |
多孔性配位高分子(MOF)は、その高い設計性と機能性で、近年、注目されている物質群である。本研究は、いまだかつて報告のない、高い電子伝導性を示すMOFの開発を目的としている。 第1年度は、ドナー分子TTFにピリジンが結合したTTF誘導体配位子(以下TTF-py)を用いて、高電子伝導性の金属錯体ネットワークの構築を試みた。Cu(hfac)_2(H_2O)_x(x=1,2)とTTF-pyからドナー型金属錯体Cu (hfac)_2 (TTF-py)_2を得、これをアクセプター分子F4TCNQと反応させたところ、電荷移動錯体と思われる粉末(以下錯体1)が得られた。錯体1は絶縁体であったが、磁化率は、錯体1の組成をCu(hfac)_2(TTF-py)_2-(F_4TCNQ)_2としたとき、Cu_<2+>の常磁性によって説明でき、骨格自体は設計通りにできていると考えられるため、TCNQ誘導体のアクセプター性を検討することで電子伝導性が得られる可能性が示唆された。 並行して、電荷移動錯体(DIETSe)_2MBr_2Cl_2[M=Ga, Fe]の物性測定を行った。この系はドナー分子DIETSeと四面体アニオンMX_4^-がヨウ素結合でつながったネットワークをもち、高い電子伝導性に加えて、M=Feの場合には、反強磁性を示す錯体であり、本研究課題の基盤となるものである。圧力下での伝導度測定から、MBr_2Cl_2塩ではMCl_4塩よりも絶縁相が抑制されており、FeBr_2Cl_2塩では、反強磁性転移温度の上昇が見られたことから、アニオンのハロゲン置換により物性が制御できたことがわかった。これはヨウ素結合による物質開発の有用性を示唆する重要な結果である。また、米国強磁場施設にて45Tまでの強磁場下で抵抗測定を行い、反強磁性と磁場誘起絶縁相の共存状態や、30Kという高温下での明瞭な磁気量子振動、反強磁性相での異常なヒステリシス現象など、極めて新規性の高い電子状態を発見することに成功した。これらは、第2年度中にできる限り早く論文投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TTF誘導体配位子による電子伝導性錯体構築の指針が得られたため。また磁性と伝導性のカップルした電荷移動錯体についても多くの興味深い結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
電荷移動錯体についての結果を論文にまとめあげる。TTF誘導体配位子以外の配位子についても検討し、電子伝導性の錯体ネットワークの構築を目指す。
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Research Products
(5 results)