2014 Fiscal Year Annual Research Report
ボトムアップ法による電子伝導性多孔性配位高分子の創成
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13J01778
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川口 玄太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電子伝導性 / 金属錯体 / 電子状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
第2年度は、前年度に得られた、ドナー分子TTFにピリジンが結合したTTF誘導体配位子4-[2-tetrathiafulvalenyl-ethenyl]pyridine(以下TTF-py)を用いた電荷移動錯体の単結晶化を試みた。まず、Cu(hfac)2(H2O)x (x = 1, 2)とTTF-pyからドナー型金属錯体Cu(hfac)2(TTF-py)2(以下錯体1)を得た。錯体1をアクセプター分子であるTCNQ誘導体と反応させた。電解法や拡散法を用いて単結晶化を行っているが、現在のところ、単結晶は得られておらず、条件の最適化が必要であると考えられる。 磁性伝導体(DIETSe)2MBr3Cl [M = Ga, Fe]に関して、高圧力、低温、強磁場といった多重極限下で物性測定を行った。この系はドナー分子DIETSeと四面体アニオンMX4-がヨウ素結合でつながったネットワークをもち、高い電子伝導性に加え、M = Feの場合には、反強磁性秩序を示す電荷移動錯体であり、本研究課題の基盤となるものである。伝導度、磁化率測定から、スピン密度波相(絶縁相)の抑制傾向、反強磁性転移温度の上昇が確認され、混晶化によって、物性が系統的に制御可能であるということが示唆された。また、米国強磁場施設NHMFLにて35 Tまでの強磁場下で抵抗測定を行い、FeBr3Cl塩において、反強磁性から磁場誘起絶縁相への直接転移を含む、非常に特異な相挙動を観測した。さらに強磁場下で明瞭な磁気量子振動を30 Kまで観測し、非常に小さい有効質量を有することが示唆された。非磁性のGa塩とは異なり、温度により振動強度は増減しており、Feの磁性との相関が示唆される。また、極低温では反強磁性相に大きなヒステリシスが現れることを発見し、母物質にはこうした現象は見られないことから、混晶特有の物性現象であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁性と伝導性のカップルした電荷移動錯体について、新しい特異な相挙動を発見した。学会発表も積極的に行い、2件の賞を受賞した。
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Strategy for Future Research Activity |
電荷移動錯体についての結果を論文に発表する。TTF誘導体配位子以外の配位子についても検討し、電子伝導性の錯体ネットワークの構築を目指す。
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Remarks |
受賞 日本化学会第94春季年会 学生講演賞、日本化学会、2014年4月10日 第8回分子科学討論会 優秀講演賞、分子科学会、2014年10月28日
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Research Products
(6 results)