2013 Fiscal Year Annual Research Report
クマムシ固有の新規クロマチンタンパク質S261が寄与する放射線耐性機構の解析
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13J01805
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 拓磨 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | 極限環境耐性 / クマムシ / 放射線耐性 / X線 / DNA二重鎖切断 / DNA結合 / 哺乳類培養細胞 / クロマチン |
Research Abstract |
ヨコヅナクマムシ(Ramazzottius varieornatus)は極めて高い放射線耐性を示す動物で、ヒトの半致死量の1,000倍に当たる4,000Gyの放射線を照射してもほぼ100%の個体が生存する。通常、高線量の放射線は多様なDNA障害を引き起こすことで、生物に重篤な影響を与える。ヨコヅナクマムシでは、こうした放射線障害からDNAを保護・修復する機構が存在すると考えられるが、その分子的基盤は全く分かっていない。 そこで研究代表者は、この放射線耐性を支える候補因子として、クマムシ固有の新規クロマチンタンパク質S261に着目し、放射線耐性への寄与とその分子的基盤の解明を目的としている。これまでに、培養細胞(ヒト胎児腎由来HEK293, ショウジョウバエ胚由来S2)においてS261が核DNA全体に局在すること、ゲルシフトアッセイ法を用いたin vitroの解析で、S261のリコンビナントタンパク質がDNA結合活性を示すことを見出している。 本年度は、哺乳類培養細胞をもとにS261定常発現株を作出し、DNAの放射線障害に与える影響を調べた。その結果、DNA二重鎖切断の応答箇所を反映するγ-H2AXのFoci数がS261発現株で有意に減少することがわかった。また、放射線照射によって生じるDNA断片量を定量したところ、S261発現株では親株と比較してDNAの断片化が半分程度に抑制されることがわかった。以上の結果から、S261は核DNAに直接結合し放射線障害からDNAを保護している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、哺乳類培養細胞をもとにS261定常発現株を作出することに成功している。そして、放射線照射によるDNA断片化の発生が抑制されること、およびDNA二重鎖切断応答箇所が減少することを見出した。これらはS261が放射線耐性機構に寄与する可能性を示唆する結果であり、当初の計画である「培養細胞への機能賦与系を用いたクマムシタンパク質の機能解析」について大きな進展があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、次の項目について研究を遂行する。 1.作出したS261定常発現株を用いて、放射線照射後に培養細胞の生存率が親株と比較して向上するかを検証する。 2.クマムシ個体レベルにおいて放射線耐性能に影響を与えるかを検証するために、ゲノム編集技術を用いてS261のノックダウンを試みる。
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Research Products
(6 results)