2014 Fiscal Year Annual Research Report
クマムシ固有の新規クロマチンタンパク質S261が寄与する放射線耐性機構の解析
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13J01805
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 拓磨 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 極限環境耐性 / 放射線生物学 / 放射線耐性 / X線 / DNA二重鎖切断 / クマムシ / 哺乳類培養細胞 / Dsup |
Outline of Annual Research Achievements |
1. S261ノックダウン株の作出 本年度は、S261_HEK293が示すDNA保護活性がS261の発現依存であるかを検証することを目的として、S261の発現を阻害する株の作出を試みた。S261のmRNAをターゲットとしたshRNAの発現コンストラクトをS261_HEK293に導入したところ、S261mRNAの発現量が約75%低下した株が得られた。以降、同株をS261ノックダウン株(S261+shS261)として解析を進めた。 2. shS261株を用いたγ-H2AX assay法によるDNA保護活性の検証 S261_HEK293及び、上記項目1で作出したS261+shS261に対してX線を照射した後、DNA損傷箇所を反映するγ-H2AXを免疫染色法により検出して、細胞核当たりのFoci数(γ-H2AXの集積箇所数)を定量した。その結果、S261_HEK293では、親株であるHEK293と比較してFoci数が約50%減少したが、S261+shS261ではHEK293と同程度まで増加した。S261のノックダウンによってDNA損傷の発生が有意に増加したことから、S261定常発現株におけるDNA保護活性がS261の発現に依存したものであることが明らかになった。 3. S261による細胞生存率向上の検証 上記項目2の結果から、S261定常発現株では放射線耐性が向上している可能性を考えた。そこで、4Gyの放射線照射後7, 9, 11日目に細胞数を測定したところ、親株及び、S261+shS261では減少していたのに対して、S261_HEK293では増加していた。また、増殖した細胞に形態的な異常は認められなかった。これら結果は、S261_HEK293において増殖可能な生細胞数が多いこと示しており、DNA損傷の発生が抑制されたことによって細胞の生存率が上昇したことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、shRNAを用いたS261ノックダウン株の作出に成功し、S261定常発現株におけるDNA保護活性がS261の発現に依存したものであることを明らかにした。さらに、S261定常発現株では放射線照射後の細胞生存率が親株と比較して向上したこと、S261ノックダウン株では細胞生存性の向上が認められないことを示した。これは極限環境生物に由来する新規なDNA結合タンパク質がヒト培養細胞に放射線耐性を付与した初めての例であり、本研究計画である「培養細胞への機能賦与系を用いたクマムシタンパク質の機能解析」について大きな進展があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、DNA保護活性を担う領域を探索する目的で、次の項目について研究を遂行する。 1.一部領域を欠失したDsupを定常発現する哺乳類培養細胞の作出 2.一部領域を欠失したDsupを定常発現する哺乳類培養細胞におけるDNA保護活性および細胞生存性への影響の解析
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Research Products
(8 results)