2014 Fiscal Year Annual Research Report
電気化学的手法を用いた三次元組織構築のための血管網構造の高速バイオアセンブリ
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13J01825
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大﨑 達哉 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の課題は、血管内皮細胞と間葉系幹細胞を用いて多層構造の血管様構造を作製することにあった。これは間葉系幹細胞から分化させた周皮細胞ないし平滑筋細胞を用いることによって解決した。つまり、血管内皮細胞の周りに周皮細胞をまとわりつかせることによって、長期間血管構造を生体外で維持することに成功した。これまでの3週間程度という培養期間から、1ヶ月程度血管様構造を維持できることができるようになった。更に、ゲルにもこの間葉系幹細胞を加え血管内皮細胞ともに共培養をすることで、血管構造の長期間維持だけではなく、血管新生の誘導も同時に誘導することができた。間葉系幹細胞と血管内皮細胞を共培養するストラテジーは、以前から存在したが、このような送液培養系でも同じような効果が期待できることを証明した。今年度の終わりは、血管構造の作製から、血管構造を持った肝臓組織の作製に移行するために、iPS細胞から誘導した肝臓の細胞を用いこれまでの送液培養に加える事によってその活性を評価した。これまでに、肝臓細胞として肝がん細胞であるHepG2やヒト初代肝細胞を用いてきた。しかし、ヒト初代肝細胞は単離が難しく増殖しなく、HepG2はそもそもがん細胞であるという理由のため、再生医療での臨床応用には使用することができない。そこで、iPS細胞から誘導したiPS-Hepatic endoderm(iPS-HE)という内胚葉細胞をスフェロイド状にして内皮細胞、間葉系幹細胞とともにゲルに組み込み送液培養を行った。スフェロイドの作製は、酸素透過性PDMSチャンバーを用いて行うことで、直径200 μm程度のスフェロイドを効率よく作製するこができた。スフェロイドにすることによって肝機能の上昇や、iPS細胞から成熟肝細胞への分化誘導効率の上昇が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究員は、2年目に計画していた研究計画を遂行し、iPS細胞を加えた実験系を作製し、血管内皮細胞と間葉系幹細胞とともに肝臓細胞への分化から機能評価を組み合わせることで、生体外で血管構造付きの肝組織を作製し、研究を更に加速させた。これにより、一般的に培養維持増殖が困難と言われている肝臓細胞をiPS細胞から作り出すことによって、潜在的な問題であった細胞ソースの問題を解決する事ができた。更に、後半では実際にモデル動物に移植し、作製した肝組織がマウス体内において機能することを証明した。具体的には、マウス門脈にバイパスさせ体外循環ながらマウス血中にヒト肝細胞が分泌したアルブミンが検出された。このことから、作製した肝機能デバイスは再生医療へ向けた肝疾患治療に有用であることを示した。 この成果は、国内の学会3件(生物工学会、再生医療学会、電気化学会)国際学会4件で発表した。特に後述の再生医療に関する学会である「Termis-AP」[MRS2015]で研究成果を口頭発表し、これらの結果の一部を学術論文「PLoS one」に報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の結果から、アルブミン分泌が低いことや、未分化マーカーが発現していることから、未分化細胞がまだ残っており分化が不十分であるという結果とも考えられる。現在は、これらの分化条件やスフェロイドの懸濁条件を最適化し、より密な肝臓類似組織を作製している。解決策の一つとしては、培養液やゼラチンのゲルの中に分化誘導因子を加える事で更に、成熟した組織にすることができると考えている。また、肝細胞は増殖しゲル内部で血管構造を備え組織化された肝組織を形成した。更に、マウス門脈へのカニュレーション移植による動物実験により、マウス血液から移植した肝細胞が分泌したアルブミンを検出することができた。研究を更に発展させるために、まずは劇症肝炎のモデルマウスを効率良く作製することである。今後は、さらなる機能を付与した肝機能組織を作製するとともにその治療効果を証明できるように、肝不全マウスへ移植し、マウスの肝機能を補助できるような組織の作製を目指していく。
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Research Products
(12 results)
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[Book] 実験医学2015
Author(s)
大崎達哉、福田淳二、小池博之、武部貴則
Total Pages
1250(55-59)
Publisher
羊土社
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