2013 Fiscal Year Annual Research Report
脂質ラフトと膜貫通型キナーゼの協働によるシグナル変換機構:1分子追跡による研究
Project/Area Number |
13J01859
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平本 菜央 京都大学, 物質―細胞統合システム拠点, 特別研究員(PD)
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Keywords | 1分子イメジング / 細胞内シグナル伝達 / ラフト / 拡散係数 / GPIアンカー型タンパク質 |
Research Abstract |
本提案研究では、『GDNFの細胞内シグナルの時空間制御機構と、それに関わるラフト機構』について、①GPIアンカー型タンパク質である受容体GFRと膜貫通キナーゼRETの相互作用および活性化の機構の解明と、②RETとSrcの下流シグナルの時空間制御機構の解明を目的とする。 初年度ではまず、刺激前におけるGFRとRETの細胞膜上での挙動を、1分子イメジングを用いて観察した。その結果、両方の分子には、1)常に動いている、2)常に止まっている、3)動いたり止まったりしている、という3種の軌跡があると考えられた。そこで、以前研究室で開発したソフトを用いて、観察された全ての分子の軌跡を「動いている」「ずっと止まっている」「一時停留」の3つに定量的に分類し、各々の合計時間を求めた。その結果、GFRとRETの両者とも、共発現させたときに常時静止している成分が増加した。しかし、その時GFRとRETはほとんど共局在しなかった。これは、両者が結合した結果、シグナル系が介在して、両者の存在様式が変わった可能性を示唆している。 次に動いている分子について調べた。それらの拡散運動の速さは、共発現によって変わるのかどうか、「常に動いている」と分類された各分子1つずつについて、それらの拡散係数を求めた。GFRの拡散係数は、0.67㎛^2/s、一方でRETは0.21㎛^2/sであり、GFRの方がRETより約3倍速い。この結果は、GFRとRETが刺激前の状態ではほとんど結合していないことを示唆している。実際、共発現させても、両者の拡散係数に変化はみられなかった。 前出の結果と合わせると、共発現はGFRとRETの両者の止まっている分子の数を増やすが、動いている分子については、拡散運動に影響を与えない、ということが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
GDNF刺激前後におけるGFRとRETの動態や、GFRの短寿命ダイマー形成を1分子イメジングにより観察した点に関しては、計画通りである。しかし、研究開始初めの時期に妊娠による絶対安静期間があり、それに加えて妊娠中は全体を通して体調が優れず、研究時間の確保が難しかった。さらに、3月1日から産休に依る研究員中断に入っている。
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Strategy for Future Research Activity |
刺激前後におけるGFRとRETの動態やオリゴマー形成とコレステロールとの相互作用を明らかにし、ラフト領域との関連を解明する。さらに、GFRオリゴマーとコレステロール、さらにラフト成分である糖脂質を同時に1分子イメジングすることで、ラフト脂質相互作用の重要性を検討する。 また、蛍光ラベルしたリガント(GDNF)を使用し、GFRに結合したGDNFのもとで、GFRとRETがどのように会合し、相互作用するのか調べる。
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Research Products
(1 results)