2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01895
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
生駒 英晃 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アラケロフ幾何 / 代数幾何 / 有理点とその高さ / 有理点の分布 / 数論的体積 / ザリスキー分解 / 張の基本不等式 |
Research Abstract |
当研究の目的は、アラケロフ幾何における数論的線型系と数論的体積の性質を調べ、張の基本不等式を生成的に巨大な数論的因子に一般化することです。平成25年度は前年度からの研究を引き継ぎ、張の基本不等式の「下限」について調べました。研究当初、張の基本不等式の上限と下限は考えている数論的因子に関する高さの本質的最小と絶対的最小で与えられると予想していましたが、残念ながらこの形では反例を得ました。修正された予想は、数論的因子には数論的b-因子の範囲で相対的ザリスキー分解が存在し、その正部分の本質的最小と絶対的最小が求める上限と下限を与えるというものです。 上記目的を遠成するため、森脇、ブルゴス・ヒル、フィリッポン、ソンブラによって数論的曲面や数論的トーリック多様体の場合に得られていた、数論的にネフなエルミート直線束の数値的判定条件を一般次元の数論的多様体の場合に一般化しました。これは代数幾何におけるセールの豊富性判定法の類似と見做すことが可能です。この結果により、垂直的にネフな数論的因子に付随する数論的オコンコフ凸体の「下限」が有理点の高さの絶対的最小で与えられることがわかり、相対的ザリスキー分解の存在を仮定した上で、張の基本不等式の下限を一般化することができます。しかし、一般には相対的ザリスキー分解の存在を数論的因子のカテゴリーで期待することはできず、数論的b-因子まで拡張する必要があります。 相対的ザリスキー分解の存在に関連して、森協によって数論的曲面の場合に得られていたザリスキー分解の数値的特徴付けを一般次元の場合に一般化しました。またテシエ・コバンスキーの不等式の類似を示し、数論的体積の凸性をより概念的に説明しました。その応用として、ネフかつ巨大な錐の上でユアンのブルン・ミンコフスキー不等式の等号が成立するための条件は、数論的にR-線型同値であることを示しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究目的達成のために, 残念ながら当初の研究計画を多少変更する必要がありました。しかし、目的達成に向けた新しい糸口の可能性を見いだし、部分的な結果をプレプリントにまとめて公開しました。張の不等式の下限に関連して、数論的なセールの豊富性判定法を確立できましたので、おおむね順調に進展していると評価します。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、張の基本不等式の上限と下限は与えられた数論的因子の本質的最小と絶対的最小で与えられる訳ではありませんでした。修正された予想は、与えられた数論的因子の数論的b-因子としての相対的ザリスキー分解の正部分の本質的最小と絶対的最小で与えられるというものです。また上限についてはもとの本質的最小と一致するかもしれないと予想しています。 本課題研究では当該年度の研究を引き継ぎ、数論的因子が垂直的にネフな場合に数論的オコンコフ凸体の「上限」が本質的最小に等しいことを目指して研究を継続します。また、数論的b-因子としての相対的ザリスキー分解の存在を示し、張の基本不等式一般化の最終決着を目指します。
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Research Products
(2 results)