2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J01934
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
金 志善 東京藝術大学, 音楽研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 外地邦楽 / 植民地朝鮮 / 近代音楽史 / 京城日報 / 音楽記事 / 音楽広告 / 外地音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、植民地朝鮮における邦楽の実態を調べ、邦楽が朝鮮社会にどのような役割を果たしていたのかを考察するものである。 本研究に関する先行研究は非常に少なく、邦楽に関するまとまった一次資料も管見の限り見当たらないため、まず、どのような邦楽家がどのような活動を行ったのかについて調べる必要があった。そこで、邦楽の全体像をつかむために『京城日報』の音楽記事・広告に注目した。『京城日報』(1906~1945)は、在朝鮮日本人向けに発刊され、在朝鮮日本人には欠かせない情報誌であった。『京城日報』には、音楽に関する記事・広告の情報が含まれており、朝鮮における邦楽に関する情報を探り出せる資料である。 本研究課題を遂行するために、2段階に分けて計画を立てた。第1段階では『京城日報』に現れた音楽関連記事・広告を抽出し、データベース化作業を行い、第2段階では第1段階で行ったデータベース化作業を基に①『京城日報』の邦楽関連記事・広告を通じてみた邦楽の傾向、②在朝鮮日本人社会における邦楽の役割、③「朝鮮楽における邦楽の役割、④朝鮮人がとらえた邦楽の姿について研究を行うという計画であった。 そこで、まず、2013年~2014年にかけて第1段階における作業を行った。1907年から1945年まで発刊された『京城日報』を網羅し、邦楽、朝鮮楽、西洋楽、大衆音楽にジャンルを分け、それらの音楽記事と広告を抽出する作業を行った。この成果は、索引集と資料集として韓国にある民族苑という出版社で2015年度中に出版を予定している。 そして、第1段階で行った作業データをもとに第2段階①の課題の一部について、2015年2月7日に行った東洋音楽学会東日本支部第82回定例研究会(於東京藝術大学)において「植民地朝鮮における邦楽の実態―『京城日報』の新聞記事を中心に―」を口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、本研究の基礎となる『京城日報』の音楽記事・広告の抽出作業を2013年から約2年間にわたり行い、完成させたことから進展がみられると思われる。しかも、そのデータは索引集・資料集として出版を準備しており、現在そのデータは出版社に提出し、出版を待っているところである。 また、一部の成果を東洋音楽学会の定例研究会で口頭発表を行い、抽出作業から得られたデータをもとに研究を行う本格的な体制が整えられたのでおおむね順調に研究の進展があるとみられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、2段階に分けて計画を立てており、その第1段階である『京城日報』に現れた音楽関連記事・広告を抽出し、データベース化作業は終わった。今後行う研究は、第2段階の研究計画であるデータベース化作業を基に①『京城日報』の邦楽関連記事・広告を通じてみた邦楽の傾向、②在朝鮮日本人社会における邦楽の役割、③朝鮮楽における邦楽の役割、④朝鮮人がとらえた邦楽の姿について研究を行う計画である。 ①では、朝鮮においてどのような邦楽家がおり、具体的にどのような活動を行ったのか明らかにし、朝鮮で行われた邦楽の傾向について考察する。当時の社会状況、音楽状況の背景を踏まえた上で、どのような邦楽が行われ、親しまれたのか確認し、②で当時朝鮮の日本人社会の伝統文化継承と邦楽の役割について考察する。 ③では、妓生(舞、歌など酒宴席の雰囲気を高潮させることの仕事を職業とする官妓、民妓などの芸妓)が三味線などの日本の楽器を日本人の師匠に習ったという記事があり、少なくとも妓生の中には、日本音楽が深く浸透していたとみられる。ここから邦楽が朝鮮楽にどのような影響を与えたのかその実態を明らかにし、考察する。 ④では、邦楽が朝鮮でどのように紹介され、朝鮮人知識層は邦楽に対するどのような認識を持っていたのか明らかにする。邦楽について、雑誌『朝鮮』、『三千里』、『新女性』などに紹介記事があり、当時、これらの雑誌の読者層であるの朝鮮人知識層の目には、邦楽がどのように映っていたのか注目したい。 これらの研究成果は、東洋音楽学会や日本音楽学会、韓国朝鮮文化研究会などにおいて研究発表を行いたいと思っている。
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Research Products
(3 results)