2013 Fiscal Year Annual Research Report
子育てをめぐる日本社会の<家族主義>の研究--児童自立支援施設への質的調査から
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13J01994
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤間 公太 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 家族主義 / 子育ての脱家族化 / 児童自立支援施設 / 質的研究 / 社会的養護 / 連帯 / ケアの絆 / 集団性と個別性 |
Research Abstract |
本年度研究成果の内容は以下である。 まず、申請研究内容のうち、「社会的養護をめぐる言説分析」を完遂し、査読つきの学術雑誌に論文として発表した。そこでは、ある意味子育ての脱家族化の典型といえる社会的養護をめぐる議論において、「家庭」というロジックが常に一定の説得力を持って受け入れられてきており、近年になればなるほどその支配力は強まっているという知見を得た。こうしたことの背景として、集団のしがらみや抑圧を脱却し個人主義の実現を目指した戦後日本社会において、ケアにおける連帯の意義が説得力を失ったことを指摘した。結論として、孤独死などの社会問題化から新たなる連帯の形が模索されている今日においては、社会的養護施設のような集団型のケアが持つ意義をあらためて問うていく必要があると論じた。 次に、参与観察を終了し、知見をいくつかの論点に分けた上で、国内外の複数の学会大会で報告した。主な論点は、施設入所児童の退所前後をめぐる問題や、ケアの集団性と個別性という二項対置の見直し、である。いずれの論点からも、子育てをめぐる日本社会の根強い家族主義、関連して、家族に頼れない当事者の性の基盤の脆弱性という、現代日本社会の重大な問題が照射されている。 こうした議論の意義は、第一に、これまでの家族社会学で比較的手薄であった社会的養護を、子育ての脱家族化論という新しい議論の俎上に載せたこと、第二に、それを通して、家族主義と個人主義という二項対立を超えた新たな連帯(≒ケアの絆)の構想という課題に実証的に接近を試みること、である。 児童自立支援施設への聞き取り調査は、次年度も継続して行う。他の社会的養護機関へも調査に行く予定である。また、平成25年度より中国地区児童自立支援施設協議会専門委員会オブザーバーに着任したが、これについても、引き続き行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多くの学会で報告の機会を行い、そこで得たフィードバックを反映することで、調査から得た知見をブラッシュアップしている。また、中国地区児童自立支援施設協議会専門委員会オブザーバーに就いたことで、現場とより深いネットワークを構築することが可能になった。計画以上に進展していると判断できると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
知見をいくつかの論点に分節化し、投稿論文に執筆している。今後、掲載に向けた修正が課題となる。 併せて、博士論文の初稿を執筆した。今年度中の提出に向けて、最終調整を行っていく。 調査については、児童自立支援施設での聞き取りを継続するとともに、児童養護施設、里親、児童相談所といった他機関での調査も行い、より分厚い知見を得ることが課題となる。
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Research Products
(6 results)