2013 Fiscal Year Annual Research Report
持ち上げ可能ベクトル場の観点からの写像の特異点の研究
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13J01998
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
溝田 裕介 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | liftable vector field / lowerable vector field / finitely L-determined / preparation theorem / finitely generated / corank at most one / multigerm |
Research Abstract |
今年度は持ち上げ可能ベクトル場(liftable vector field)やlowerable vector fieldに関する一般論をいくらか発達させた。これらの概念は1976年にArnol'dにより波面の特異点の分岐を調べるために導入されたものであり、ある種の特異点の分類など様々な応用がある。複素の場合は代数幾何の立場から調べられている対数的ベクトル場と密接な関係があることが知られている。 まず、多項式持ち上げ可能ベクトル場の最高次をどれだけ低くとることができるかの評価を多重曲線芽の場合に対して改善した。さらに、liftable vector fieldのなす加群の構造を解明する一歩として、余階数高々1のL-有限確定な多重写像芽に対して、lowerable vector fieldのなす加群が有限生成になることを示した。この定理を証明する際には、多重写像芽に対してソースやターゲットの微分同相芽の合成による作用を考え、その軌道の接空間達に着目する。これらの接空間は写像芽の安定性を特徴付けるのにも使われる重要な空間である。これらの接空間の交わりを調べることがlowerable vector fieldのなす加群やliftable vector fieldのなす加群を調べる際に重要であり、それは予備定理を用いることで実の場合と複素の場合並行してなされる。対数的ベクトル場は複素のカテゴリーで調べられることが大半であり、実のカテゴリーで考えられることはほとんどない。しかし、現在の研究は将来的には実のカテゴリーに対する対数的ベクトル場の理論の構成につながると思え重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
lowerable vector fieldのなす加群が有限生成であるという結果は少なくとも実の場合においては全く新しい結果である。さらにその生成元を構成する原理も明快に与えているため、大きな前進であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
lowerable vector field全体のなす加群の有限生成性について、仮定を緩めることを考える。これらの仮定は今回の証明方法においては欠かせないものであり、緩めるためには新たな手法が必要になる。現状で一番見込みがあるのは余階数の仮定を外すことである。また、今回示した結果を足掛かりに、liftable vector field全体のなす加群の有限生成性、またその生成元の構成法について調べていきたい。さらにこれらの加群と他の概念との関連がないか、あるいは応用がないかどうかを探っていきたい。たとえば、分岐加群との関連、持ち上げ可能ベクトル場の理論をもとにした対数的ベクトル場の理論の再構成などである。
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Research Products
(3 results)