2013 Fiscal Year Annual Research Report
八重山地方におけるウミガメ類の行動圏に基づく保全に関する研究
Project/Area Number |
13J01999
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西澤 秀明 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アオウミガメ / 回遊行動 / データロガー |
Research Abstract |
今年度は、沖縄県八重山地方の石垣島においてアオウミガメの産卵期間である(6月~7月)に、アオウミガメの産卵モニタリングをおこない、組織サンプリングの採取、加速度・位置・動画を記録できるデータロガーの装着および回収をおこなった。これらについて、本研究員がこれまでに取得していたものと合わせて解析をおこなった。 1. 組織サンプルをもとにミトコンドリアDNAのハプロタイプを決定し、先行研究を含めてこれまでに明らかになった日本沿岸のアオウミガメの摂餌群と太平洋の産卵集団とのハプロタイプの構成を比較することで、北太平洋においてアオウミガメがどのような移動をおこなっているかについて推定した。その結果、八重山・沖縄本島においては八重山、小笠原以外の太平洋産卵場からの寄与がみられる一方で、本州においては小笠原からの寄与が大きいことがわかった。また、もっとも北に位置する三陸沿岸では、東太平洋地域からのアオウミガメの寄与も確認された。これらの知見は、八重山地方で生まれたアオウミガメがどのような移動をおこなっているかについての知見をもたらすものであり、アオウミガメの移動経路を考慮した保全策の策定に重要な研究であるといえる。 2. データロガーのデータに関しては、これまでに得られていた加速度データをもとにアオウミガメの陸上での産卵行動プロセスを特徴づけた。これは、これまであまり注目されてこなかったウミガメ類の陸上での行動について、その各行動段階の分類やエネルギー消費の推定をおこなうための基盤となるものであり、産卵に適した海浜環境や人間の影響を考慮したアオウミガメの保全策を考えることにつながる。取得したデータのさらなる解析については、今後も取り組んでいく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
八重山地方で産卵をおこなうアオウミガメからの組織サンプリングの採取に基づくミトコンドリアDNAハプロタイプの解析、データロガーの装着および回収に基づく産卵間期の行動解析が実施され、八重山地方のアオウミガメの行動について遺伝的構成と行動計測の両面から迫るという目的は一定程度進められていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、組織サンプルに基づくDNAの解析とデータロガーの装着による八重山地方のアオウミガメの行動推定・計測を実施していく。野外調査の安全性確保のため、調査は石垣島での調査が主となる予定であり、当初の目的に挙げていた石垣島・西表島間での行動計測に基づく比較は困難となる予定である。かわりに、ウミガメ類の形態的機能についてより詳細な検討をおこない、ウミガメ類の行動を実現している機能に関する知見を得ることで、八重山地方におけるウミガメ類の移動・行動について深く掘り下げていく方針である。
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Research Products
(7 results)