2014 Fiscal Year Annual Research Report
八重山地方におけるウミガメ類の行動圏に基づく保全に関する研究
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13J01999
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西澤 秀明 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アオウミガメ / 回遊行動 / データロガー / DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
沖縄県八重山地方の石垣島において、6月~7月に、アオウミガメの産卵モニタリングを実施した。組織サンプリングの採取、深度・位置情報を記録できるデータロガーの装着・回収をおこなった。本年度は、調査期間中に複数の台風が到来し、予定していたデータロガーの回収を実施できず、1個体からの回収、および衛星発信器を通して得られた別の1個体からのデータ取得にとどまった。一方、直接的に八重山地方のウミガメ類の行動を示すものではないが、それに関する示唆を与える下記の研究を実施した。 1. ウミガメ類に付着するカメフジツボに関する研究:石垣島・屋久島に産卵したウミガメ類に付着していたカメフジツボのミトコンドリアDNAのハプロタイプを決定した。同一のウミガメ個体に付着していたカメフジツボの多くが異なるハプロタイプを示し、ウミガメ類の回遊経路を反映している可能性がある。ウミガメ類の回遊行動において、付着生物に注目することの有効性を示した。 2. 沖縄本島周辺海域のアオウミガメに関する研究:八重山地方で生まれたアオウミガメは、八重山地方周辺海域および沖縄本島周辺海域を利用している(昨年度までの研究より)。今回、本島の西側と東側で捕獲されたアオウミガメの比較に関する共同研究を実施した。西側と東側で、アオウミガメの遺伝的組成に違いはみられなかったが、体長組成には違いがみられた。沖縄本島への八重山産アオウミガメの寄与が補強された一方、成長に伴う生息環境の遷移を示唆するものであり、八重山地方のアオウミガメの保全を考えるうえで重要な知見であるといえる。 3. 淡水棲カメ類の運動に関する研究:アオウミガメは長距離の移動をおこなう。長距離移動を実現するための機能的側面を明らかにするため、扱いが容易な淡水棲カメ類に注目し、複数種間での運動の比較を実施した。現時点で、摂餌と歩行運動についての相違が明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
八重山地方での研究については、天候不順の影響もあって予定通りの調査を進められなかった。しかし、沖縄本島をはじめとする周辺海域や淡水性カメ類という近縁種での研究を進めることができた。これらの研究から、八重山地方のアオウミガメの行動について示唆を得ることができており、研究の目的にあった達成度をある程度実現できているといえる。以上のことから、研究はおおむね順調に進展しているといってよいのではないかと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、組織サンプルに基づくDNAの解析とデータロガーから得られたデータの解析による八重山地方・石垣島でのアオウミガメの行動推定・計測を実施していく。また、周辺海域でのウミガメ類からのデータ取得、ウミガメ類の形態的機能についての検討、およびカメフジツボを含む付着生物や近縁のカメ類の解析についても推進していく予定である。これらの研究を通して、八重山地方におけるウミガメ類の移動・行動について多面的に捉えていく方針である。
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Research Products
(5 results)