2013 Fiscal Year Annual Research Report
先天性筋ジストロフィーに関与する機能性糖鎖の構造とその生物学的役割に関する研究
Project/Area Number |
13J02038
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 直樹 京都大学, 大学院医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 先天性筋ジストロフィー / 糖鎖修飾 / α-ジストログリカン / HNK-1ST / LARGE / AGO61 |
Research Abstract |
本研究は先天性筋ジストロフィー発症機構の理解に必須であるα-ジストログリカン(α-DG)糖鎖修飾機構の解明を課題としている。本年度中に得られた結果は以下の通りである。 HNK-1STの作用部位の解析を行った。ラミニン結合モチーフであるポストリン酸糖鎖の付加部位を一カ所しか持たないα-DGのドメイン欠損変異体Δmucin1-Fcを用いた代謝標識実験によって、HNK-1STがポストリン酸構造上に硫酸基を付加することを見出した。さらに、α-DGに先に硫酸基が転移されると、ポストリン酸糖鎖合成酵素であるLARGEが糖鎖を付加できないことを示した。以上の結果はLARGEとHNK-1STによる競合的なα-DG糖鎖付加制御の分子機構を解明したものである。 HNK-1STがα-DG上に合成する硫酸化糖鎖の構造解析は、上記のΔmucin1-Fcを用いて行うこととした。これにより一カ所の糖鎖付加部位のみに焦点を当てた特異性の高い構造解析が可能となる。Δmucin1-Fcの大量精製は完了しており、現在は共同研究者の協力のもと、質量分析によって糖鎖構造解析を行っている。 申請時の計画には記載していないが、先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子の一つであるAGO61の機能解析を行った。AGO61遺伝子欠損マウスを用いた解析の結果、AGO61が生体内でα-DG上のポストリン酸糖鎖の生合成に必須であること、さらにポストリン酸糖鎖の基礎構造の合成を担うN-アセチルグルコサミン転移酵素であることを明らかにした。このため当初の計画に記載したα-DGの新規リガンド探索を実施できなかった。しかし、AGO61機能解析は疾患の分子病態解明に直接的に貢献できる点で優先度が高いと考えており、今後もAGO61遺伝子欠損マウスを用いて、特に先天性筋ジストロフィーで生じる大脳皮質形成障害の発症機序の解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初に計画したHNK-1STの作用部位解析は達成できており、硫酸化糖鎖の構造解析もやや遅れ気味ではあるが構造決定に向けて進行中である。これに加え、先天性筋ジストロフィー原因遺伝子AGO61の役割を解明できたことから、計画以上に進展したと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
Δmucinl-Fcを用いた糖鎖構造解析を引き続き行い、HNK-1STが合成する硫酸化糖鎖の構造を決定するとともに、α-DGのラミニン結合モチーフであるポストリン酸糖鎖の全体構造の解明に取り組む。 先天性筋ジストロフィーの分子病態解明に貢献するため、当初計画していたα-DGの新規リガンド探索ではなく、先天性筋ジストロフィーで生じる大脳皮質形成障害の発症機序の解析を、AGO61遺伝子欠損マウスを用いて行う。
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Research Products
(6 results)