2013 Fiscal Year Annual Research Report
フッサールの他者論と倫理学の架橋 --「表現」概念によるアプローチ--
Project/Area Number |
13J02065
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 崇志 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | エトムント・フッサール / 他者論 / 倫理学 / 現象学 / コミュニケーション / 表現 |
Research Abstract |
本研究の主題は「フッサール他者論と倫理学の架橋」である。 この主題を掲げた本博士論文の最終的な目的は、エトムント・フッサール(1859-1938年)の現象学における「表現」概念の再解釈を通じて、彼の他者論(経験される対象を他者と共有すること、あるいは他者について経験することについての理論)と倫理学(他者との関係を含めた人間生活一般における規範を問う理論)を架橋することであるそこで本研究は、以下のような段階的な目的をたてることによって、フッサールの他者論と倫理学の架橋という最終的な目的を達成することをめざす。 研究目的A : 『論理学研究の補遺』を参照することによる、「表現」概念の再解釈 研究目的B : 「表現」概念の再解釈を踏まえた、フッサールの現象学の再検討 研究目的C : フッサールの現象学の再検討を踏まえた、彼の他者論に含まれる倫理的規範の解明 本年度はこの段階的な目的のうち、研究目的Aを達成した。その成果は主として書きの五点である。 (1) 研究方針の設定 : 告知という問題への注目 報告者は、フッサールの「表現」概念をなす諸要素のうち、特に「告知」(表現する者の体験を表現すること)に注目し、それが他者とのコミュニケーションを可能にするという特徴をもつものとして構想されていたことを確認した。その上でこの概念について以下の研究を行った。 (2) 告知概念の由来についての概念史的研究 (3) 告知概念に依拠した他者論のその後の展開 (4) 告知概念に依拠した倫理学のその後の展開 そして以上の研究を踏まえて、第五に、研究目的Aの総括として『論理学研究の補遺』についての文献的研究を行い、フッサールの遺稿における告知概念の役割を網羅的にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目9に記載したとおり、本研究は年度ごとの課題として、 研究目的A : 『論理学研究の補遺』を参照することによる、「表現」概念の再解釈 研究目的B : 「表現」概念の再解釈を踏まえた、フッサールの現象学の再検討 研究目的C : フッサールの現象学の再検討を踏まえた、彼の他者論に含まれる倫理的規範の解明 を設定しているが、本年度は研究目的Aを達成し、かっその成果を発表したと考えるため。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の本年度の研究成果により、『論理学研究』執筆期のフッサールの思想から告知概念に依拠した他者論と倫理学を取りだすことは可能であるが、後の連合についての発生的現象学的な分析に即した他者論や、超越論的間主観性の理論に即した倫理学は、そのような他者論と倫理学の単なる展開ではなく、重大な相違点を含んでいることが明らかになった。そこで、この相違が生じた理由を明らかにするために、発生的現象学や超越論的間主観性という、後期フッサールの基本思想に至るまでのフッサール現象学の成立過程の再検討を行うことが、次年度以降の課題となる。
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Research Products
(5 results)