2013 Fiscal Year Annual Research Report
西アフリカ・サヘル地域における野生樹木を利用した砂漠化への対処法
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13J02096
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
桐越 仁美 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | サヘル地域 / 砂漠化防止策 / 救荒木システム / 野生樹木 / 樹形 / 食料確保 / ニジェール / ガーナ北部 |
Research Abstract |
本研究は、砂漠化問題が深刻になっている西アフリカ・サヘル地域において、住民である農耕民ハウサの実践する野生樹木の利用と管理、土地荒廃と干ばつという環境変動から生計を維持するための対処方法を明らかにすることを目的としている。現在までの研究では、農耕民ハウサは耕作地内に自生する野生樹木を管理することによる砂漠化防止策を実施していることが明らかとなっている。調査村に住み込むことで、①砂漠化プロセスの解明、②野生樹木を利用した砂漠化防止策の検証、③野生樹木の利用に関する調査という3点についての調査をおこなう。同様の調査を同じサヘル地域に位置するガーナ北部についてもおこない、ハウサの実施する砂漠化対策としての野生樹木の利用を総合的に評価する。最終的には、サヘル地域における砂漠化の防止と食料確保による生活向上の両立を目指す救荒木システムの考案を目指す。 樹木の作物への影響を検証するため、調査地において、採集した耕作地内の樹木の葉を用いてアレロバシー活性(他感性作用)の分析をおこなったところ、救荒食料として利用されるBalanites aegyptiacaにより、トウジンビエの生長が抑制されることが明らかとなった。 ガーナ北部における植生調査、聞き取り調査から、ガーナ北部における土地の荒廃メカニズムはニジェールとは異なり、主に水食であることが明らかとなった。ニジェールにおける浸食は主に風食であったために、飛砂の捕捉や流亡の防止に樹木が有効であったが、水食が主な原因となるガーナ北部では、浸食の防止に対する樹木利用はみられなかった。しかし、ガーナ北部でも食料不足が生じた際の食料確保のための樹木利用が一般的にみられた。土地の荒廃に対する利用と樹形の認識は、ハルマッタンの影響を強く受けるニジェールのハウサ特有のものであるが、食料確保による生活の向上のための樹木利用は、降水量が900㎜程度のガーナ北部においても同様に機能していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
樹木が作物に与える影響を、アレロパシー活性という要素を取り入れて検証することで化学的にも検証することができた。これにより、作物の生産性を維持しつつ救荒食料の確保もできる救荒木システムには、救荒食料となる樹木を残す場所も考慮していく必要があることが明らかとなった。また、ガーナ北部との比較から、樹形に対する認識がハウサ特有のものであり、風食に対して樹木の利用が効果的であることが明らかとなっている。以上より、おおむね当初の計画通りに進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の研究成果に、樹木のアレロパシー活性やその他の化学性についての詳細な分析、砂の捕捉の効果やそれに伴う作物の生長状態についての検証を加える。また、ニジェールやガーナにおける救荒食料としての樹木の認識や利用、それ以外の用途についての調査と分析を進める。これらの分析結果から、様々な樹種と樹形の組み合わせによる正負の影響を、ニジェールとガーナの環境下について、それぞれ検討していく。荒廃地と耕作地、またその境界において必要な樹種と樹形の組み合わせの効果を検討し、作物の生産性を維持しつつ救荒食料を確保していくための救荒木システムの確立を目指す。
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