2013 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属触媒によるニトリルと二酸化炭素ガスのカップリング反応の開発
Project/Area Number |
13J02099
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
菅原 真純 北海道大学, 大学院生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 二酸化炭素 / α-アミノ酸 / 1,2-不斉シリル化 / 銅 / 立体特異的カルボキシル化 / N-スルホニルイミン / α-アミノシラン |
Research Abstract |
筆者は、二酸化炭素を一炭素源としたα-アミノ酸の合成を目指して研究を行っており、これまで光学活性なN-tert-ブチル-α-アミドスズと二酸化炭素ガスをフッ化セシウム存在下で反応させることで立体特異的なカルボキシル化が進行し、光学活性なα-アミノ酸誘導体が得られることを報告している。このカルボキシル化の基質であるα-アミノスズの合成には化学量論量の不斉補助基を必要とするため、著者は次なる展開として、イミンからの触媒的不斉反応を用いた光学活性α-アミノ酸誘導体の合成を目指し、研究を行った。その結果、N-スルホニルイミンに対し、銅触媒およびキラルジアミン配位子存在下、シリルボラン、さらにプロトン化剤として2,6-キシレノールを加え反応させると、目的のシリル化が良好に進行し、光学活性なα-アミノシランを最高95%eeで得ることに成功した。銅やロジウムなどを触媒として用いたシリル化反応は、共役カルボニル化合物への1,4-付加が多く報告されているが、イミンへの不斉1,2-付加は報告例がなく、本反応を共役イミンに適用した際には1,2-シリル化が選択的に進行するため非常に興味深い。また、光学純品なN-tert-ブチル-α-アミドシランを基質として二酸化炭素ガスをフッ化セシウム存在下で反応させると、α-アミノスズを基質とした場合と同様に、立体選択的なカルボキシル化が温和な条件下で進行し、光学活性なα-アミノ酸誘導体を最高86%eeで得ることにも成功した。このことから、筆者はイミンからの触媒的不斉反応による光学活性α-アミノ酸の合成法を新たに見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
筆者はN-スルホニルイミンに対する、銅触媒およびキラルジアミン配位子を用いたエナンチオ選択的な1,2-シリル化を新たに開発し、光学活性なα-アミノシランが高い収率および不斉収率で得られることを見出した。また、光学活性なα-アミノシランからフッ化セシウム存在下、1atmの二酸化炭素と反応させることで立体特異的なカルボキシル化が進行し、光学活性なα-アミノ酸誘導体が得られることを見出した。このことから著者は、二酸化炭素を一炭素源とした光学活性α-アミノ酸の合成を触媒量のキラル源を用いて行うことに成功し、この成果は現在論文投稿中である。したがって、期待以上の研究の進展があったと評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は先述したエナンチオ選択的なシリル化をケトイミンの反応へと展開し、また、得られた4級α-アミノシランに対しカルボキシル化を行うことで光学活性な4級α-アミノ酸誘導体の合成を目指す。触媒的なケトイミンへのシリル化は1例しか報告されておらず、エナンチオ選択的なものは全く報告されていない。一方で、4級α-アミノ酸は天然には存在せず、非天然アミノ酸の化学合成の中でも比較的報告例が少ないため、二酸化炭素を用いて合成することができれば有用であることが期待される。
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