2014 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属触媒によるニトリルと二酸化炭素ガスのカップリング反応の開発
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13J02099
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
菅原 真純 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 二酸化炭素 / α-アミノ酸 / アンモニウムイリド / 第四級アンモニウム塩 / [2,3]-Stevens転位 / プロパルギルエステル / 金 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は、二酸化炭素を一炭素源として用いたα-アミノ酸の新規合成法の開発を目指して研究を行っている。報告者は最近、キラル銅触媒を用いたN-tert-ブチルスルホニルイミンの不斉シリル化反応を新たに開発した。さらに、得られたα-アミノシランは二酸化炭素雰囲気下CsFを作用させることで立体特異的なカルボキシル化が進行し、光学活性なα-アミノ酸を得ることにも成功した。すなわち、報告者は二酸化炭素を一炭素源として用いたα-アミノ酸の触媒的不斉合成を達成した。 しかし、このα-アミノ酸の合成法はカルボキシル化の際にカルバニオン中間体を経由しているため、窒素α位に芳香環もしくはアルケニル基を必要としており、基質適用範囲の点において課題を残している。そこで報告者は、より一般性の高いカルボキシル化反応を開発すべく、アンモニウムイリドに着目し研究に着手した。すなわち、窒素原子上にシリルメチル基、およびアリル基を有する第四級アンモニウム塩に対し二酸化炭素雰囲気下CsFを作用させることで、窒素α位にアニオンを安定化する置換基をもたなくともカルボキシル化が進行することを見出した。反応後にMeIを作用させることでメチルエステル化体を90%収率で得ることができた。この生成物はtBuOKなどの塩基を作用させることで[2,3]-Stevens転位が進行し、窒素α位にアリル基を有するα-アミノ酸が90%収率で得られた。 また、報告者がイリノイ大学シカゴ校に滞在していた際の研究であるが、アルキンと共役したケトンを有するプロパルギルエステルに対しカチオン性金触媒を作用させることで、エステルのカルボニル基の転位を引き金とした異性化および環化が順次進行し、二環式ケトンが得られることを見出した。生成物に含まれるシクロテン骨格は生物活性化合物にも含まれる重要な骨格であり、この骨格の新規構築法として非常に興味が持たれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
報告者はキラル銅触媒を用いた、N-スルホニルイミンの触媒的不斉シリル化反応を新たに開発し、得られたα-アミノシランに対し、二酸化炭素雰囲気下CsFを作用させることで、立体特異的なカルボキシル化が進行し、光学活性なα-アミノ酸を得ることに成功した。この成果はOrganic Letter誌およびSynfact誌に掲載されている。さらに報告者は、N-メチルシリル基を有する第四級アンモニウム塩に対し二酸化炭素雰囲気下CsFを作用させることでもカルボキシル化が進行することを新たに見出した。したがって、当初の計画以上の研究の進展があったと評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は先述したアンモニウムイリドのカルボキシル化を、アミノメチルシランを出発物質としたワンポット反応へと展開させる。すなわち、アミノメチルシラン、ヨウ化アリル、CsFを二酸化炭素雰囲気下反応させることで、アンモニウム塩の形成、カルボキシル化、エステル化、[2,3]-Stevens転位が順次進行し、α-アミノ酸誘導体が一工程で得られることが期待される。さらに、窒素α位にアルキル基を有するアミノメチルシランを用いることで、α,α-二置換α-アミノ酸が生成すると予想している。α,α-二置換α-アミノ酸は天然には存在せず、非天然アミノ酸の化学合成法の中でも比較的報告例が少ないため、二酸化炭素を用いて合成することができれば非常に有用である。
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Research Products
(3 results)