2013 Fiscal Year Annual Research Report
ニワトリ卵管のナチュラルキラー細胞を介する免疫機構の解明
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13J02100
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
新居 隆浩 広島大学, 大学院生物圏科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ニワトリ / 卵管 / 細胞傷害性細胞 / ナチュラルキラー細胞 / 卵殻形成 / サイトカイン / エストロゲン / 鶏伝染性気管支炎ウイルス |
Research Abstract |
本研究は、ニワトリ卵管の細胞傷害性細胞の1種であるナチュラルキラー細胞(NK)を介する免疫機構を解明することを目的としている。本年度は①抗原刺激に応答してNK様細胞を卵管へ誘導して活性化する因子の追求、②関連して卵管への鶏伝染性気管支炎(IB)ウイルス感染により引き起こされる卵殻形成異常に関与する因子の追求を目的とした。 ① 卵管の退行および、性ステロイド刺激が、卵管への弱毒化IBウイルス刺激に対する細胞傷害性細胞の動員や関連因子の発現に及ぼす影響を追求した。実験では産卵鶏、休産鶏、休産鶏にエストラジオールベンゾエイト(EB)を投与したEB鶏を供試した。その結果、産卵鶏とEB鶏ではIBウイルス抗原刺激により、卵管粘膜の細胞傷害性細胞のCD8+細胞およびTCR'yδ+T細胞の分布は増加したが、休産鶏では変動しなかった。また、産卵鶏とEB鶏では細胞傷害性細胞を誘導するCXCL12とCX3CL1、NK細胞を活性化するIFN一γ、NK細胞が持つ受容体のB-NK、細胞傷害タンパク質のグランザイムとパーフォリン、ssRNAウイルスを認識するtoll様受容体7の遺伝子発現はウイルス刺激で増加したが、休産鶏では変化しなかった。以上のことから、卵管ではIBウイルスに対して細胞傷害性細胞の動員による免疫応答が働き、この応答は産卵期に比べて休産期には低下すること、そしてこれにはエストロゲン量の減少が1つの要因として関わると推定された。 ② 炎症性サイトカインのIL-1βおよびIL-6刺激が子宮部粘膜の卵殻形成に関与する calbindin-D28Kの発現に及ぼす影響を追求した。子宮部粘膜の組織片をIL-1βまたはIL-6を添加した培養液で培養した。その結果、サイトカイン刺激は、calbindinの遺伝子発現を一時的に増加させるが、タンパク発現は低下させることが認められた。このことから、炎症性サイトカインは適正なカルシウム分泌を障害して、卵殻形成に影響を与える可能性があると推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナチュラルキラー(NK)細胞をin situ hybridization法によって同定し、分析に用いる予定であったが、NK細胞の同定は失敗した。しかし、NK細胞を含む特定の細胞傷害性細胞のグループを対象に細胞分布や関連遺伝子解析を用いた分析を進め、その結果エストロゲン刺激が細胞障害性細胞の誘導に関与する可能性があるという新たな知見を示すことができた。また、関連してこの実験で用いたIBウイルスが引き起こす卵殻形成異常の原因として、炎症性サイトカインが直接関与する可能性を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はニワトリ卵管のナチュラルキラー(NK)細胞を介する免疫機構を解明することを目的としていたが、NK細胞の同定は困難であった。そこで、今後は細胞傷害性細胞を対象とした分析に変更する。また、本年度は関連実験として、養鶏現場で問題となっている卵殻形成異常に着目し、その原因の1つに炎症性サイトカインの影響があることを示した。今後はその影響について詳細を追求する。
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Research Products
(5 results)