2014 Fiscal Year Annual Research Report
大戦期ポルトガルにおけるエリアーデの宗教学的営為に関する研究
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13J02116
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥山 史亮 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ルーマニア正教会 / 宗教学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究成果により、大戦期ポルトガルにおけるミルチア・エリアーデの宗教研究および文学創作の活動は、ルーマニア領内へのソヴィエト軍の侵攻という大戦の動向と密接な関係を有し、ソヴィエトの侵攻からルーマニアの文化伝統を防衛するという目的を有していたことが明らかになった。今年度は、昨年度の研究成果に基づき、エリアーデの言論における政治性を、ソヴィエトに対する抵抗運動に参与したほかのルーマニアの文化人がどのように解釈したかという問題の解明に取り組んだ。とりわけ、ルーマニア正教会の修道士であるニコラエ・ステインハルトおよびヨアン・ペトル・クリアーヌとエリアーデの交遊の整理を行ない、以下の三点を解明した。1)ルーマニア保安警察は、ルーマニアの政治体制に関するエリアーデの言論を詳細に記録しており、国内の秩序を脅かす危険性を有するものとして理解していた。 2)ニコラエ・ステインハルトや哲学者コンスタンティン・ノイカといった反体制運動に参与していた文化人たちは、エリアーデの言論を、ルーマニアの伝統的文化を共産主義政権の文化統制から守り、後世に残すための言葉として理解していた。 3)エリアーデの言論の政治的意味とその役割に関する研究は、同郷の宗教学者であるヨアン・ペトル・クリアーヌが詳細に調べ、重要な研究成果を出していることが明らかになった。 上記の1)と2)については、北海道基督教学会および日本宗教学会で研究報告を行なった。その内容を研究論文「ステインハルトの『幸福の日記』におけるエリアーデ宗教学に関する言及」としてまとめ、『宗教研究』に研究成果として発表した。 上記の3)については、現在資料の整理と分析を進めており、来年度に資料の翻訳および分析結果を研究成果として発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報告者は、交付申請書において記した資料の読解および翻訳を、予定どおりに進めており、その研究成果の発表も順調に行っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究成果により、エリアーデの宗教研究と文学創作、亡命組織における政治活動は密接に関連していることが明らかになり、それらの活動方針はポルトガル滞在時期と戦後におよぶ数多くのルーマニア知識人たちとの交友に基づいている可能性が想定されるようになった。今後は、ルーマニアおよびポルトガルの知識人とエリアーデの交友に関する資料を整理し、ルーマニア内外において宗教に関する言論が帯びた政治性を明確化する必要がある。とりわけ、エリアーデと同郷の宗教学者であるヨアン・ペトル・クリアーヌとの交友についての分析は不可欠な作業になることが予想される。
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Research Products
(3 results)