2013 Fiscal Year Annual Research Report
ナトリウムイオン駆動型べん毛モーターのイオン透過と回転エネルギー変換機構の研究
Project/Area Number |
13J02161
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹川 宜宏 名古屋大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細菌べん毛 / モーター / ナトリウムイオン / 固定子 |
Research Abstract |
細菌べん毛モーターは、エネルギー変換ユニット=固定子と、回転する本体=回転子から構成される。モーターの回転力発生のためには、固定子を介してイオンが流入すること、固定子が回転子の周りに正しく集合すること、固定子と回転子がダイナミックに相互作用すること、が重要である。本研究では、それらの現象それぞれに着目し、ナトリウムイオン駆動型べん毛モーターの回転メカニズムの包括的な解明を目的としている。 べん毛モーター固定子を介したイオン透過メカニズムを解明するため、プラグ領域を欠失した固定子による生育阻害および細胞内ナトリウム濃度を測定する事で固定子のイオン透過能を検出する実験系を用いて、固定子を介したイオンの透過経路や、チャネル開閉の制御に重要な因子の探索を行い、固定子の推定チャネル部分だけでなく細胞質側領域がイオン透過活性に関与する新規の知見を得た。 固定子が回転子周囲に集合する際に重要とされるT-ring、H-ringを構成するタンパク質のペリプラズム空間における局在を観察するために、Tat輸送系により、それらのタンパク質に機能的な緑色蛍光タンパク質(GFP)を結合したものを輸送する実験系を開発し、Na^<+>非依存的な集合を観察でき、ペリプラズムタンパク質の新規イメージング法に関する新たな知見が得られた。 固定子/回転子のそれぞれの荷電残基に変異を導入した二重変異体について、べん毛モーター運動能を解析し、ナトリウムイオン駆動型べん毛モーターではこれまで考えられてきたよりも複雑で多くの荷電残基がモーター機能に関与することを明らかにした。また、好熱菌・好圧菌を含めた様々な菌種由来の固定子について、いくつかが大腸菌や海洋性ビブリオ菌内で機能を相補することを明らかにし、特に高度好熱菌Aauifex aeolicusの固定子が、大腸菌内でNa^<+>駆動型固定子として機能することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ナトリウムイオン駆動型べん毛モーター機能における「イオン透過」「固定子集合」「固定子・回転子間相互作用」の各現象のすべてにおいて、新たな知見が得られた。加えて、解析が難しい高度好熱菌の固定子のイオン選択性や機能互換性を解明できたため乱計画以上の進展が得られたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
安定に発現する固定子タンパク質を検討し、大量培養、精製、そして結晶化とX線結晶構造解析を目指す。好熱菌/好圧菌由来のものを含めたいくつかの新規の固定子タンパク質およびその断片に着目し、スクリーニングを行なう。 固定子タンパク質/回転子タンンパク質に変異を導入し、運動能への影響の調査やシステイン架橋実験を行なうことで、回転力PomA-FliG間相互作用部位を生化学的に検出することを試みる。また、共同研究で、NMRによる相互作用の検出を試みる。 蛍光タンパク質を融合したべん毛モーター構成タンパク質を使用して、タンパク質問相互作用や共局在を観察する実験基ができあがりつつあるため、より詳細な実験手法確立する。
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Research Products
(9 results)