2013 Fiscal Year Annual Research Report
生体外培養を用いた魚類卵濾胞の最終成熟分子機構の解明
Project/Area Number |
13J02197
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石原 学 北海道大学, 大学院水産科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 排卵能 / 卵成熟能 / 卵濾胞培養 / 精子培養 / 採卵適期推定 / LH感受性 / 試験管ベビー |
Research Abstract |
魚類の卵濾胞は、黄体形成ホルモン(LH)により卵成熟能を獲得後、さらにLHが作用することで排卵能を獲得する。卵成熟能および排卵能を獲得した卵濾胞は、卵成熟誘起ステロイド(MIS)の作用により卵成熟および排卵が誘起される。しかし、排卵能獲得の分子機構に関する知見はほとんどない。そこで本研究では、排卵能獲得に関与する遺伝子の探索を主な目的とした。ニホンウナギから排卵能獲得前の卵濾胞を含む卵巣片を摘出し、LHとしてヒト絨毛性生殖腺刺激ホルモン(hCG)を添加、あるいは無添加の培養液中で培養した。培養後の卵巣片を用いてcDNAサブトラクション法と次世代シーケンサー"Ion PGM"による網羅的な解析を行ない、排卵能候補配列として64個のコンティグを得た。さらに、複数個体間での定量PCRによる解析から、暫定的な排卵能関連遺伝子群として10個のコンティグを絞り込んだ。 チョウザメ類は飼育環境下では自然排卵せず、ホルモン投与による採卵を行なう。しかしながら、得られた卵の孵化率は個体ごとにバラつき、個体ごとの採卵適期の指標を得ることが望まれる。そこで、交雑種であるベステルの卵濾胞を経年摘出し、MISとして17α-hydroxyprogesteroneを、LHとしてサケ脳下垂体抽出物を用いて培養した。培養後の卵成熟率および排卵率から、卵成熟能、排卵能およびLH感受性の経年変化を調べた。その結果、卵成熟能は9月以降維持し続けた。排卵能およびLH感受性は季節的に変動しており、12月前後には一部の卵濾胞が、4月あるいは5月には多くの卵濾胞が獲得していた。また、排卵能およびLH感受性を獲得傾向にある個体が採卵に適していることが示唆された。さらに、精子培養により未熟な精子に運動能を獲得させ、培養後に排卵した卵との人工授精から、世界で初となる試験管ベビーの作出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに次世代シーケンサーによる網羅的解析を終了し、暫定的に排卵能関連遺伝子を10個にまで絞り込むことに成功した。また、チョウザメ類の卵成熟能、排卵能およびLH感受性の経年変化を調べ、排卵能とLH感受性が採卵の指標に成り得ることを示した。また、精子培養の条件を検討し、運動能を獲得させることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
絞り込んだ10個の排卵能関連遺伝子を対象とし、whole-mount in situ hybridization法により各コンティグの発現部位を調べることでさらなる絞り込みを行なう。チョウザメ類においても、ニホンウナギと同様に次世代シーケンサーを用いて、卵成熟能および排卵能に関与する遣伝子の探索を行なう。高い孵化率で試験管ベビーを獲得するための最適な培養条件について検討する。
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Research Products
(1 results)