2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J02237
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白井 洸志 京都大学, 経済研究所, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 顕示選好理論 / 消費者理論 / ゲーム理論 / ミクロ経済学 / 比較静学単調性 / 所得効果 / ポテンシャルゲーム / 戦略補完性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、経済主体の行動データから、様々な経済モデルの妥当性を検証する方法論を構築することである。中でも、A消費者需要の所得単調性およびBゲーム理論におけるポテンシャル関数の存在性の二つについて申請書で特に取り上げ、また実際に取り組んできた。Aにおける消費者需要の所得単調性は応用ミクロ経済学のみならず純粋理論研究や計量経済分析においても、明快な分析結果を導くうえで欠かせない条件である。また、Bにおけるポテンシャル関数の存在性は、純粋戦略均衡の存在性やadaptive learningの収束、また均衡の頑健性といった観点から戦略型ゲームの分析上重要な役割を果たす。また、後述する戦略補完ゲームとも関係が深いことが知られている。 平成25年度において、A.の研究については有限個の価格-消費データが観察されたとき、それが合理的かつ所得単調的な需要行動と整合的となるための必要十分条件の導出に成功した。データが条件を満たしているか否かを計算するためのアルゴリズムの構築にも成功した点は、今後実証研究への応用に進む布石となりうる。また、これに付随して数学上の貢献も副産物的に得られている。 B.項の研究については、集団的意思決定関数の性質から、その背景にあるゲームがポテンシャル関数を有するか否かを簡明な条件で特徴づけることに成功した。この結果は早稲田大学からworking paperとして公表もされている。 また、平成26年2月からは英国・オックスフォード大学に訪問研究員として滞在し、顕示選好理論の世界的第一人者であるJohn Quah教授と共同研究にも着手している。具体的には、各プレイヤーの行動データから、1. その背後にあるゲームで戦略補完性が成立しているか否か、2. 戦略補完性に対応するポテンシャル関数が存在するか否かを検証する方法の構築につとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究初年度にあたるため、昨年度は研究結果を一つでも多く積み重ねるこどに留意した。結果的に、前項にも記述したとおり、それらを適切に選別することで質の高い学術論文を複数本完成させる目処がたっている。また、海外研究機関に滞在し、当地で共同研究を行った結果、当初は困難が予想されたため研究計画に含めなかった箇所にまで踏み込んだ研究を進められていることによる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度内に得られた方法論を実証データに応用すること、その上で今年度前半までに現在進行中の論文3本中少なくとも2本を学術誌に投稿することが今年度直近の課題である。そのために現在滞在中のオックスフォード大学において、共著者であるJohn Quah教授の他、実証研究や計量経済理論の専門家とも連絡を密にする方針である。
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Research Products
(2 results)