2013 Fiscal Year Annual Research Report
気孔開閉特性が個葉から生態系スケールの森林のガス交換過程に与える影響評価
Project/Area Number |
13J02278
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鎌倉 真依 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 気孔開閉 / ガス交換 / 異圧葉 / 等圧葉 / 森林生態 |
Research Abstract |
本研究は、不均一な気孔の開閉が起こるメカニズム(様式・頻度)を把握し、またそれが個葉や森林生態系のガス交換過程にどの程度影響を与えているのかを明らかにすることにより、気孔から森林生態系に至るマルチスケールでの森林のガス交換過程の統合的な理解を試みることを目的としている。 初年度は、複雑な階層構造をもつ半島マレーシアの常緑熱帯雨林(パソサイト)を主な観測地として、不均一な気孔開閉特性の時空間的変動を調べた。過去の研究から、野外にお行ける不均一な気孔の閉鎖は、異圧葉樹種において、強光・乾燥下で起こることが明らかになっている(ex. Kamakura et al. 2011, 2012)。また、森林上層には異圧葉樹種、下層には等圧葉樹種が多く分布しているという報告もある(Kenzo et al. 2007)。そこで、葉の気孔開閉特性(均一/不均一開閉)は、葉の解剖学的構造の違いによって決められているのか、あるいは環境条件によって変化するのかを調べた。パソサイトの上層から下層に分布する樹木を対象に、(1)二次元クロロフィル蛍光画像測定、(2)個葉ガス交換速度の実測とシミュレーション、(3)加圧浸潤法、を同時的に行うことで、気孔開閉特性を評価した。その結果、不均一な気孔の閉鎖は、林冠を構成する異圧葉樹種において、葉温・飽差が上昇した際に生じた。またその際、均一な気孔閉鎖で予測されるよりも急激な光合成日中低下が起こっていた。一方、異圧葉樹種であっても、中層から下層に分布する樹木では、一日中均一な気孔開閉が起こっていた。従って、同じ森林内でも、樹木の葉の構造のみでなく、樹高や置かれた生育環境によって、どちらの気孔開閉が起こるのかが柔軟に変化すると考えられた。 また、森林のガス交換機能解明の研究の一環として、新しい技術である幹の水ポテンシャル測定に基づく熱帯モンスーン地域におけるチーク林の水利用特性評価や、冷温帯落葉樹林における温暖化実験の影響評価などにも取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、本研究計画に挙げている国内外の観測サイトにおいて、一年を通じて様々な野外観測を行った。その結果、森林生態系における樹木葉の気孔開閉特性が、葉の解剖学的構造ではなく環境要因によって決められていることや、温度上昇によって葉の形態よび生理学的機能がどのような影響を受けるか等を明らかにした。平成25年度の研究成果については、主著論文一本が投稿中であり、また次の論文も投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、野外観測による証拠をさらに積み重ねると同時に、気孔開閉特性の変化がガス交換に与える影響の定量的評価方法についても検討していく予定である。概ね計画書の内容に沿って研究を遂行していきたいと考えている。
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Research Products
(6 results)