2014 Fiscal Year Annual Research Report
気孔開閉特性が個葉から生態系スケールの森林のガス交換過程に与える影響評価
Project/Area Number |
13J02278
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鎌倉 真依 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ガス交換 / 気孔開閉 / 水ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
半島マレーシア熱帯常緑林の林冠を構成する異圧葉樹種では、強光下で、不均一な気孔閉鎖とともに光合成日中低下が起こる。樹冠スケールのガス交換速度は、主に林冠木により規定されるため、不均一な気孔閉鎖によって生じる個葉光合成量低下は、樹冠スケールのCO2交換量にも影響する可能性がある。従って、森林内での不均一な気孔開閉メカニズムを解明する必要がある。そこで、林床から林冠に分布する5樹種を対象に、葉内光合成電子伝達速度分布、個葉ガス交換速度の実測と予測、加圧浸潤法による気孔開度分布、葉の形態の観測を行い、不均一な気孔開閉の時空間スケールを調べた。結果、林冠構成樹種では日中の葉温・飽差の上昇に伴い不均一な気孔閉鎖とともに光合成日中低下が見られた。一方、葉温・飽差が相対的に低い森林中層から林床の樹木では、終日均一な気孔開閉が見られた。従って、林冠構成樹種は周囲の微気象環境の変化に応じて気孔開閉様式を変化させ、葉の光合成能と水分状態を維持していると考えられる。 また本調査地では、渦相関法を用いた樹冠上CO2・H2Oフラックスを観測している。そこで、個葉および樹冠スケールで測定したガス交換データを用い、個葉スケールで生じる不均一な気孔閉鎖が、樹冠スケールのガス交換特性に与える影響を調べた。まず個葉データから、Farquharモデルを用いて‘見かけの最大炭酸同化速度(Vcmax*)を算出し、日中の気孔開閉パターンを調べた。日中のVcmax*の低下は、不均一な気孔閉鎖の指標となる。また、樹冠データから、Inverse Big-Leafモデルを用いて、樹冠スケールの気孔開度(gC)と見かけの最大炭酸同化速度(VcMAX*)の日変化を算出した。その結果、個葉のVcmax*低下と対応する時期に、樹冠スケールのVcMAX*の低下も見られ、不均一な気孔閉鎖が樹冠スケールのガス交換に影響することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、半島マレーシア熱帯常緑林において、不均一な気孔開閉特性の時空間変動についての研究成果を取りまとめて国際誌に発表した。また、個葉スケールのガス交換特性を樹冠スケールへと繋ぐ発展的課題にも取り組み、その成果を学会で発表した。以上のことから、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、不均一な気孔閉鎖が生じるのは、日中の飽差の上昇が主要因であると考えられる。そこで、不均一な気孔閉鎖が生じる時の飽差の値(閾値)をストレス指標として表し、不均一な気孔閉鎖を考慮した個葉ガス交換モデルを作成したい。また、個葉ガス交換特性を樹冠スケールへと繋ぐ際のモデル解析についても、上記のストレス指標を用いて解析できるように、現行モデルをさらに改良したい。 そして、改良したモデルを用いて、現在の主調査地である半島マレーシア以外の森林においても、不均一な気孔閉鎖が起こっているのか、またそれが樹冠スケールのガス交換特性にも影響を与えているかどうかについて、明らかにしていきたい。
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Research Products
(8 results)