2013 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体の固体化を利用した新規高分子微粒子創製法の確立とその応用
Project/Area Number |
13J02282
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
徳田 真芳 神戸大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高分子微粒子 / コロイド・界面化学 / イオン液体ポリマー / ラジカル重合 |
Research Abstract |
本研究は, 新規な機能性材料として期待されているイオン液体ポリマー(PIL)の微粒子化及び複合化に関する基礎的知見の獲得を目指している。本年度は, 1. PILの乳化重合系への適用と2. 汎用高分子微粒子との複合化に関する検討を行った。1については, 一般的な乳化重合にて使用されるイオン性の開始剤及び乳化剤を用いた際, イオン液体モノマーとのアニオン交換が生じたためにエマルションは得られず, 凝集体が得られた。ノニオン性の開始剤及び乳化剤を用いたところ安定なエマルションが得られ, 適切な条件下では比較的単分散なPIL微粒子の合成に成功した。また, 得られた粒子のζ電位は高い正の値を示した。これは水相中に存在する炭酸水素イオンが粒子表面上にてわずかにアニオン交換し, 拡散電気二重層が形成したためと考えている。この表面電荷を利用することで, CO_2中でのノニオン性開始剤を用いた無乳化剤乳化重合によりPIL微粒子の合成にも成功した。さらに得られた粒子から作製したエマルションフィルムの水滴接触角は, 前進接触角(70°)/後退接触角(28°)と非常に大きなヒステリシスが観測されたが, 水滴を完全に除去した直後のフィルム表面での水接触角を再び測定したところ70°前後の値を示した。これは, 水接触時にフィルム表面の分子鎖が親水性へと配向したものの, 水滴除去後, フィルム表面が空気に接触した瞬間に分子鎖が疎水性へと再配向したことを示唆しており, 一般的な高分子フィルム系では見られない非常に興味深い性質を見出した。 2については, 様々な汎用高分子微粒子存在下でのイオン液体モノマーのシード分散重合を行った。その結果, 各成分間の界面自由エネルギーに基づく熱力学的因子が得られる複合粒子の構造に影響を与えることを明らかにした。また, PILのアニオン交換を利用することで, 磁性を有する複合高分子微粒子の合成にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請者が交付申請書に記載した研究目的である「イオン液体ポリマー微粒子創製法の確立」だけでなく「汎用高分子との複合化」という2つのテーマに単年度で取り組んだ。前者については, 乳化重合系でのPIL, 微粒子作製における重要な知見を得ることに成功した。また, 得られたエマルションフィルムの特異性を新たに見出した。後者については, 界面自由エネルギーの観点から複合化における重要な知見を得ることに成功した。以上のことから, おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 材料としての応用を見据えたPIL複合粒子の合成について検討する。ベンゼン環を有する高分子(フェニルエチルメタクリレート ; PhEMA)がイミダゾリウム系イオン液体中にて下限臨界溶液温度(LCST)を示すことを利用し, PhEMAとPILを複合化させることで温度変化により内部構造の変化する粒子の合成, 及びPILとグラフェンから成る複合粒子の合成に挑戦する。また, PILフィルムの表面特性や新規なフィルム材料としての利用法に関する詳細な検討を行う。
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Research Products
(9 results)