Research Abstract |
核融合プラズマ加熱用大型負イオン源内のプラズマにおける空間的非一様性発現機構の解明およびその制御手法の開発の一環として, 本研究では負イオン源内の電子, および負イオンの親粒子である水素原子の空間分布とエネルギー分布を予測可能な数値解析モデルを構築してきた. 同解析モデルにより, 負イオン源内のプラズマ物理が明らかにされ, また負イオン源実機を製作することなく, 一般的な装置設計に対し, プラズマの空間分布およびエネルギー分布の予測が可能となる. 本研究では, 研究の第一段階として, 平成24年度より, マルチカスプ・アーク放電型負イオン源内の電子輸送解析モデルを構築し, 負イオン源内の電子エネルギー分布関数(EEDF)の理解を進めてきた. 負イオン源内のEEDFは熱平衡から逸脱し(非平衡となり), 高速電子による非平衡性分が負イオン源上部にのみ現れることを明らかにした. 本年度, 負イオン生成とEEDFの非平衡性の関係を理解するため, 負イオンの親粒子である水素原子の空間分布を計算する原子輸送解析モデルを構築した. 同モデルは原子生成・輸送・電離による消滅過程を自己矛盾なく計算し, 原子密度分布を計算可能である. 計算の結果, EEDFの非平衡性分により, 分子の解離性電離過程を介して負イオン源上部領域において, 原子生成が促進されるために原子密度分布に非一様性が現れることが明らかになった. また, 数値解析に用いた物理モデルを検証するため, 上記モデルから負イオン源内の原子が生じるBalmer発光線強度分布を計算し, 負イオン源実機における分光計測結果との比較を行った. その結果, 負イオン源内のプラズマ解析として初めて, 測定・解析結果のオーダーレベルでの一致を確認した. これにより, 本研究の目的であるプラズマの空間分布を予測可能な解析モデルの妥当性が検証された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では, 2014年度末までに以下の目的達成を掲げていた ; 1. 分光計測などの測定結果に対する再現性を有する解析モデルの構築. 2. 同モデルによるJT-60SA負イオン源内のプラズマ分布予測. 3. 負イオン源内のプラズマ一様性改善に向けた装置設計案の逐次提案. 現状では, 上記1および2(2014年度末までの工程の2/3)が終了している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後, 研究計画に則り, 負イオン源内のプラズマ一様性改善する. また, 一様に引き出される負イオンの電流値を目標値の22Aを超え, 最大値となる装置設計案の提案を目指す.
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