2013 Fiscal Year Annual Research Report
明末清初の出版文化と章回小説の発展史--覆刻・翻刻・後印の事例を中心に--
Project/Area Number |
13J02313
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
上原 究一 慶應義塾大学, 斯道文庫, 特別研究員(PD)
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Keywords | 書誌学 / 中国文学 / 明末清初 / 出版文化 / 漢籍 / 章回小説 / 国際情報交換 / 中国 : 台湾 |
Research Abstract |
平成25年度には、8月に上海図書館、9月に加賀市立図書館聖藩文庫、10月に東北大学附属図書館、明けて2月に京都府立総合資料館・延暦寺叡山文庫・京都大学人文科学研究所・名古屋市蓬左文庫・広島大学中国語中国文学研究室・広島大学中央図書館・広島市立中央図書館浅野文庫、3月に台湾中央研究院傅斯年図書館・台湾大学図書館、台湾国家図書館に出張し、それぞれの所蔵する漢籍、わけても金陵書坊唐氏・周氏と建陽書坊余氏の刊行した版本や李卓吾先生批評を謳う小説版本を重点的に調査した上で、可能なものについて写真やマイクロフィルムなどで複写を収集した。その他、受入研究機関である慶應義塾大学をはじめ、国立公文書館・国立国会図書館・東京大学・尊経閣文庫・静嘉堂文庫といった近郊の諸機関にも随時通って該当資料の調査・収集を行った。 その上で、11月までの成果を元に、単著論文1「金陵唐氏世徳堂刊本講史小説三種と上元王氏の双面連式挿画について」、2「金陵書坊周日校万巻楼と周氏大業堂の関係について」、3「孫悟空の図像イメージ――小説本文と絵姿と――」を公刊した。唐氏世徳堂刊本『南北両宋志伝』『唐書志伝』『東西両晋志伝』の三種の挿画を影印した書籍の解題として発表した1では、それらの講史小説刊本の挿絵の画工(下絵師)を務めた上元王氏の手掛けた小説挿画の特徴を指摘した。2では先行研究ではっきりとした関係が分かっていなかった金陵で周氏が営んだ幾つかの書坊について、周日校万巻楼仁寿堂と周氏大業堂とを中心に据えて、両者に血縁関係と直接的な継承関係とがあることを示し、併せてそれぞれの歴代の主人とその活動期間及び互いの血縁関係、更にはどのような出版物を主力商品としていたかなどを考察した。3では『西遊記』の孫悟空の図像イメージについて、世徳堂本や李卓吾甲本の本文と挿画を対照しつつ、現代的なイメージとの共通点や相違点を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の一年目にあたる平成25年度は、当初計画においては関連資料の収集に重点を置き、成果の発表については唐氏世徳堂の講史小説刊本についてのもののみを想定していたが、資料の収集が順調に進んだ結果、当初は二年目以降になると考えていた周氏一族の書坊間の関係や活動年代、及び予定になかった孫悟空の図像イメージについても論文を公刊出来た。資料収集の面でも李卓吾批評を称する『三国演義』版本の調査が計画以上に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は一年目に予定していた天理大学図書館所蔵の容興堂本『水滸伝』の調査を行えなかったので、平成26年度には実施したい。一年目に予定していたが行えなかった北京の諸機関の調査は平成26年度に入ってから一度実施したが、まだ十分ではなく、機会を見て再度出張する。また、当初計画では欧米の所蔵資料は三年目に当たる平成27年度に余力があれば調査を行う可能性もあるという程度の位置付けであったが、当研究を進めるに当たって重要な版本が数多く所蔵されているイエール大学での調査を平成26年8月に実施することにした。その分、二年目に予定していた中国国内の地方図書館の調査計画を後回しにし、重要度の低いと判断した機関の調査は割愛も検討する。
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Research Products
(6 results)