2013 Fiscal Year Annual Research Report
コフィリンが飽和結合したアクチン繊維の分子間相互作用を近原子分解能で解き明かす
Project/Area Number |
13J02335
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 康太郎 名古屋大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | コフィリン / アクチン / 細胞骨格 / 単粒子解析 |
Research Abstract |
コフィリンが飽和結合したアクチン繊維(以下、アクチン・コフィリン繊維)の極低温透過電子顕微鏡像の単粒子解析により、現在までに8.9Å分解能の3次元密度マップを得た。また、その密度マップを用いて分子動力学計算による原子モデル構築を行った。今回の構造で新たにわかった注目すべき点としで、アクチンサブユニットのD-loop部分が、αヘリックス構造をとる可能性が強く示唆された事が挙げられる。これまでの研究では、アクチン単量体・繊維状態の両方において、D-loopはループ構造をとるとされている。またアクチン繊維においては、D-loopを介したサブユニット間相互作用が、繊維構造の維持に必要だとわかっている。私が今回、アクチンのD-loop領域がループ構造をとっている構造(PDBID 2ZWH, Oda et al., 2009)と、D-loop領域の一部がαヘリックス構造をとっている構造(PDBID 1J6Z, Otterbein et al., 2001)を初期構造としてモデル構築したところ、D-loop領域がαヘリックス構造をとる方が、密度マップを良く説明する事がわかった。また、D-loop領域は、繊維軸方向のアクチンサブユニット間結合に寄与しなくなる事もわかった。このことから、コフィリンの結合によって、アクチン繊維の繊維軸方向のアクチンサブユニット同士をつなぐD-loopを介した結合が破壊され、D-loopはループ構造からαヘリックス構造へと構造相転移する事が強く示唆された。コフィリンの作用機構において、D-loopがαヘリックス構造をとる事に重要な意義がある可能性がある。また、少なくともコフィリンが結合した場合にはD-loopはαヘリックス構造をとりそうだとわかった事は、アクチン研究における進展である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分解能が目標値に及んでいないが、電子顕微鏡撮影・単粒子解析・分子動力学法によるモデル構築という一連の流れは実施でき、これまでにない知見も得られた。分解能を向上させるための追加の電子顕微鏡写真の収集を既に行っており、その新しいデータを含めた計算を現在行っている。これまでに単粒子解析のアルゴリズム改良・モデル構築の試行錯誤は良く進められたため、新たな計算は比較的スムースに完了すると期待している。また、コフィリンの大量発現系の改善も行ったので、変異導入蛋白質実験実施の準備も進んだといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り、高分解能構造決定・変異導入蛋白質を用いた実験・分子シミュレーションによる計算機実験を行う。
|
Research Products
(1 results)