2014 Fiscal Year Annual Research Report
コフィリンが飽和結合したアクチン繊維の分子間相互作用を近原子分解能で解き明かす
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13J02335
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 康太郎 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アクチン / コフィリン / クライオ電子顕微鏡 / 単粒子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
コフィリンが飽和結合したアクチン線維(以下、cofilactin線維)の極低温電子顕微鏡像の単粒子解析により、現在までに 7.3 オングストローム分解能(Fourier shell correlation 値 0.143)の3次元密度マップを得ることに成功した。次に、密度マップに対する蛋白質構造のフィッティングを行い、構造・相互作用の議論が可能な原子構造モデルを構築した。フィッティングには全原子分子動力学法による計算を利用した。原子構造モデルから考察できた事を以下に述べる。 まず、cofilactin線維において、アクチンのD-loop領域は、ループからヘリックスへの構造転移を起こすことを発見した。しかしヘリックス化するものの分子間の相互作用には全く関わらないため、分子間相互作用に都合の良いようにフォールドするわけではない。仮にループ構造をとったものと比較をしてみると、ヘリックス構造の方が分子内での原子間相互作用が増えるため、エンタルピー的により安定であると示唆された。また、D-loopは疎水的領域であり、ヘリックス化することで疎水性溶媒接触表面積が大きく減少するため、疎水効果の観点からエネルギー的に有利である。このことから、D-loopのヘリックス構造転移は、コフィリンの結合によって相互作用の相手を失ったD-loopが、エネルギー的に有利な方向へ変化した結果ヘリックス化したものと解釈している。 また、裸のアクチン線維では分子間相互作用に参加しない荷電残基が、cofilactinでは塩橋に参加していることを確かめた(サブユニット間相互作用のリモデリング)。アクチン結合蛋白質が存在する下でのアクチン線維構造多形機構の仕組みの一つと理解できる。このように、本研究の結果から、cofilactin線維構造を安定化する構造基盤を理解できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高分解能を達成するための電子顕微鏡写真の収集、画像処理システムの構築、構造フィッティング法の理解と立ち上げに想定以上に時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で得られた原子構造モデルで示唆された残基間相互作用・構造転移の特徴付けを行うために、部位特異的変異導入を施した蛋白質を用いて構造解析・速度論解析を実施し、論文としてまとめ世に報告する。その後は近原子分解能を目指すために電子エネルギー分光器と電子直接検出器を搭載した透過電子顕微鏡を用いて画像収集する事で近原子分解能に挑戦したいと考えている。
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Research Products
(1 results)