2013 Fiscal Year Annual Research Report
現象学的人間学的アプローチによる技術と倫理の一般理論の体系的・歴史的研究
Project/Area Number |
13J02337
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
景山 洋平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 現象学 / 技術論 / 現象学的人間学 / 倫理学 / リスク論 / ハイデガー / スペイン哲学 |
Research Abstract |
研究奨励費申請時の計画書に基づき、本年度は、現象学的人間学および哲学的技術論の理論的研究および実証的経験的リスク研究の資料収集と分析に従事した。研究遂行に要する時間幅の観点から、日本哲学における技術論よりも先にスペイン哲学における技術論・共同体論の資料収集・分析を優先した。 (1)現象学的人間学および哲学的技術論の主要諸著作を収集・分析し、これを後期ハイデガー存在論並びに前世紀後半の現象学研究の成果の観点から統合的に把握する事を試みた。その結果、現象学的な人間観を構成する諸位相において、人間の「本来性」を支える秩序形成のあり方が、存在論と技術論の両面で根本的に重要であるという洞察を得て、これを《線引き》の問題として統合的に研究する方向性を確立した。 (2)実証的・経験的リスク研究の資料を収集・分析し、特にその疎外形態を現象学的に分析する可能性を考察した。第一に、現象学的人間観の諸位相と現行のリスク研究におけるリスク認知の機制の関係を、統計情報が極度に少ない事象に関する意思決定に関して考察し、現行のリスク認知研究における二つの柱である統計的推論の手法とヒューリスティクスを支えるべき経験の現象学的構造として表象的意識と世界内存在の概念を活用できる事を解明した。第二に、リスクに関わる人間的生の疎外形態の存在論的構造を考察する為に、存在論的多元性に関する現象学的存在論的な理論研究を活用する可能性を検討した。その結果、未来の不確実性に関する「想定」が多元的な主体のコミュニケーションにおいて構成されるものであり、不確実性への対処の疎外性がコミュニケーション形式の問題であるという洞察を得た。 (3)19世紀後半~20世紀のスペイン哲学における哲学的な技術論・共同体論の資料をスペインに出張して収集し、日本国内未収蔵の41冊を含む計68冊の基本図書・研究書を入手し、資料の解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現象学的人間学および技術論に関して、従来の研究成果を統合的に検討する為の視点として<本来性の秩序形成>を確立できた事は、当初の計画を上回る成果であった。ただし、両課題およびスペイン哲学の研究について、収集した資料をまだ完全に分析できておらず、今後の努力が必要とされる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請した研究計画に則して、現象学的人間学の研究と技術的創造性の研究を進める。初年度で行われなかった日本哲学における技術論と共同体論の関係についても研究を進める。資料収集に関しては、比較的収集が容易な日本哲学の資料よりも、現象学的人間学および技術的創造性に関する国内外の資料に注力する。その際、初年度で構築された上述の統合的な研究上の視座を活用することによって、資料の分析過程を初めから統一性のとれたものとして構造化したい。
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Research Products
(4 results)