2014 Fiscal Year Annual Research Report
界面の分子科学を基礎とした相間移動触媒反応のマルチスケールシミュレーション
Project/Area Number |
13J02345
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉川 信明 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子動力学 / 誘電体計算 / イオン輸送 / 液液界面 / 自由エネルギー / 電気二重層 |
Outline of Annual Research Achievements |
相間移動触媒反応を考えるうえで重要となる液液界面について主に、(1) イオン輸送においてその重要性が指摘されている界面揺らぎの影響の定量的な解析、および、(2) 液液界面のマルチスケールシミュレーションのための分子動力学計算手法の考案 を行った。 (1) では、まず、昨年の時点で問題となっていたバルク間のイオンの移相自由エネルギーが実験値を再現しない点について、高度な力場である点双極子力場を開発プログラムに組み込むことで解決を図った。同時に、点双極子力場の使用による計算コストの増大を抑えるため計算プログラムの整備を行った。上記プログラムでいくつかの分子の輸送について解析を行ったところ、従来手法では解析が上手くいかないケースを発見した。 これらのケースに対応するため、界面揺らぎを表す座標をグラフ理論を用いた厳密なものに改善した。以上の改善により、液液界面のイオン輸送について本格的な解析を行ったところ、液液界面におけるイオン輸送において界面構造の変化による活性化障壁が存在することが明らかとなった。 この成果はイオンの界面通過の速度定数が拡散の速度定数に比べて小さくなるという実験事実をうまく説明しており、本成果は現在論文に取りまとめ中である。 我々は相間移動触媒反応における電気二重層の影響に注目しており、その分子論を明らかにするには電気二重層による電場の影響を含めた分子動力学計算が必須であると考えている。 (2)で考案している手法は、電気二重層を記述する巨視的な式であるPoisson-Boltzmann方程式と分子動力学計算をスムーズに接続する手法であり、我々が注目している液液界面に限らず電場の関わる電気化学界面系の多くのシミュレーションに適用可能と考えている。本手法については現在妥当性検証のためのプログラムを開発しており、今後検証を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年の課題は、PB計算にイオンペアの影響を取り込むことと、種々のイオンについて自由エネルギー曲面を作成し、それらを比較することであった。 PB計算については昨年の時点でイオンペアを考慮する計算を可能としており、これまで経験的に知られていたPTC反応の説明に定性的に成功している。 一方、液液界面におけるイオン輸送における界面揺らぎの役割の解析においては、定量性の獲得に予想以上の時間を費やしたが、本年で無事妥当と考えられる結果を得ることに成功した。 いくつかのイオンの輸送についても、自由エネルギー曲面の作成に成功しており、現在それらの比較・検証を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、誘電体計算と分子動力学シミュレーションを接続する新規手法を提案しており、今後、手法の検証を進めていく。また、界面揺らぎの時間相関を計算することで、界面揺らぎのダイナミクスとしての役割を解析する予定である。
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Research Products
(8 results)