2014 Fiscal Year Annual Research Report
クラスター変分法によるB2規則相中の転位芯構造の解析
Project/Area Number |
13J02373
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 泰徳 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | クラスター変分法 / 転位芯構造 / B2規則相 / 局所変位 / 振動の自由エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
一部の規則合金において温度上昇に伴い降伏応力が増加する特異な現象、すなわち異常強化現象が観察されている。その発現機構の一つに超部分転位の対の分裂が指摘されているが、詳細な機構は十分には解明されていない。本研究はクラスター変分法(CVM)による原子スケールでの異常強化現象の熱力学的解析を目的とする。 これまでに、従来のCVMによるB2規則相中の転位芯構造のモデル計算を行ってきた。その計算の中で、超部分転位のすべり運動における活性化エネルギーのすべり系および温度依存性が示され、高温での超部分転位の分裂を示唆する結果を得た。 しかしながら、転位芯構造の決定に影響与えると考えられる原子の局所変位を上記の計算では考慮していない。そこで、新たな計算手法としてsimplified-Gaussian CVMを開発した。本手法は、熱振動、原子の局所変位および規則度を同時に考慮した自由エネルギー計算が可能である。また、本手法は従来のフォノン計算に比べて計算コストが低く、比較的大きな計算セルを必要とする規則相中の転位芯構造の解析に非常に適した計算手法であると言える。 新たに開発したsimplified-Gaussian CVMの有用性と妥当性を確認するために、いくつかの基礎的な計算を行った。1.本手法と従来のフォノン計算による純Cuの熱力学特性の比較計算 2.純Cu中の空孔の形成自由エネルギーの理論計算 3.局所緩和および熱振動の寄与を考慮した平衡状態図のモデル計算。上記の結果は本手法の妥当性を示す。また2)の結果は転位芯を含む結晶欠陥の計算に対して本手法が有効であることを示唆する。 今後simplified-Gaussian CVMを応用した B2規則相中の転位芯構造の解析を行い、原子の局所変位、熱振動および規則度の効果が転位芯構造および異常強化現象の発現に与える影響を解析する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではクラスター変分法(CVM)の派生モデルであるGaussian CVMを用いて、転位芯構造の計算を行う予定であった。しかしながら研究を進める中で、Gaussian CVMは ①原子の局所変位を考慮せず ②特定の計算条件において解が収束しないということが判明した。本研究において、この二点は無視することのできない問題であり、新たな計算手法の開発が必要となった。 新たな計算手法の開発のために計画の変更が必要となり、研究進度に若干の遅れが生じた。しかしながら、結果的にsimplified-Gaussian CVMを開発し、より合理的かつ効率的な計算モデルの構築に成功した。 これまでに従来のCVMによる転位芯構造の解析によって、超部分転位のすべり運動における、すべり面の温度依存性、活性化エネルギーのすべり面および温度依存性が示され、異常強化現象の発現機構を示唆するいくつかの結果を得ることができた。今後、simplified-Gaussian CVMを用いてより詳細な解析結果を得られると考えられる。その点で、計画の変更はあったものの概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで従来のCVMを用いてB2規則相中の転位芯構造の計算を行ってきが、今後は、simplified-Gaussian CVMを用いてより妥当性の高い解析を行う。また、従来のCVMでは考慮されない、転位芯構造に対する原子の局所変位の影響ついて考察する。具体的な方針は下記のとおりであり、すべてsimplified-Gaussian CVMによる計算である。 1. B2規則相中のAPB(逆位相界面)エネルギーの温度依存性の計算:B2規則相中では、APBによって結合された二本の超部分転位が一つの対として運動している。このAPBエネルギーの異方性は、超部分転位の対の分裂および異常強化現象の発現において重要な指標であることがこれまでの計算から推測される。また、APBエネルギーは単独の超部分転位の非熱的な変形応力を決定するため、異常強化現象の解析において非常に重要な指標となる。 2. B2規則相中のγ-surfaceの計算:γ-surfaceの鞍点の高さは、パイエルス機構における降伏応力の決めるパラメータの一つとなる。特に、γ-surfaceの鞍点の高さに対する原子の局所変位の影響およびその温度依存性を調査する。 3. 最後に、B2規則相中の転位芯構造の温度依存性の計算:実際の超部分転位間のAPBおよびγ-surfaceは、転位芯近傍での配位数の変化および局所応力の影響を受けている。そのため、上記のバルク中のAPBおよびγ-surfaceの計算は異常強化現象の解析としては不十分であると言える。そこで、転位芯近傍での規則度および格子歪を解析し、上記のAPBおよびγ-surfaceの計算結果と比較する。 上記の計算は、現象論的なポテンシャルを使用し対象はFeCoまたはFeAlとする。上記の1.~3.の計算結果および過去の計算結果を比較検討することで異常強化現象の発現メカニズムについて考察する。
|
Research Products
(4 results)