2013 Fiscal Year Annual Research Report
ネーデルラント版画史におけるレンブラントの革新性-東洋からの影響を手掛かりに-
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13J02382
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 今日子 東北大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | レンブラント / 17世紀オランダ美術 / 版画 / 素描 / 東洋趣味 / コレクション / ミニアチュール / 東インド会社 |
Research Abstract |
本年度に実施した研究活動は以下の通りである。 1. レンブラントの素描、版画、油彩作品の中で東洋モティーフの描かれた作品を整理し、ネーデルラント画家たちの版画作品や油彩作品に見られる東洋趣味のあり方と比較を行い、レンブラントのアプローチの特異性を明らかにした。 2. レンブラントによるアジアのミニアチュール模写素描に関する調査を行った。基礎資料の整理として、現在刊行済みのレンブラントの素描全集に未収録の作品を含め、模写素描に関する来歴等の基本情報をまとめた。また、レンブラントの図像源泉となったミニアチュールに関しても、同様の資料整理と先行研究の整理を行い、17世紀のムガル派による写本挿絵の図像資料を収集した。 以上の1、2の調査、研究の成果として、国際ワークショップにおいてレンブラントのミニアチュール模写に関する研究発表を行い、ライデン大学のアジア研究の専門家達と意見交換を行った。 また、1、2を進めていく中で、17世紀オランダにおける東洋趣味は、レンブラント個人に限定されるものではなく、広く浸透していたことが明らかとなった。当初は、異国風の人物を描いたデッサンや版画、旧約聖書主題を中心とした作品を対象に図像資料の収集にあたったが、RKD(王立美術史研究所)のデータベース等を用いたところ、歴史画主題に限らず、静物画や風俗画の中にも当時の東洋趣味が読み取ることができ、このような当時の日常生活に根ざした主題では、東西交易の影響が更に具体的かつ鮮明であった。そこで申請者は、17世紀オランダの芸術の中でも、とりわけオランダ特有の趣向が反映された「静物画」に着目し、レンブラントや彼のパトロン達も所有していた「中国陶磁器」との関係にも視野を広げることとした。当時流入していた陶磁器に関しては、アムステルダム国立美術館蔵のヴィッテ・レーウ号の積載品であった磁器調査を行い、国立西洋美術館にて研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レンブラントや同時代の画家達の作品から、東洋モティーフに関する図像資料の整理ができたため、また、資料の比較からレンブラントのミニアチュール模写素描の特質を指摘し、レンブラントの芸術活動全体の中で位置づけることができたためである。しかし、こうしたミニアチュールに対する関心にっいて、当時の美意識や芸術的価値観からも一定の根拠を与えようと同時代の芸術論等にあたったが、有効なものを見いだすには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
レンブラントの芸術的関心のあり方が周辺の画家達と比べて非常に特異であることは明らかになり、ミニアチュール芸術が彼の画業においてインパクトをもったものであったことは指摘できた。しかし、同時代の画家達との相互の影響関係やミニアチュールによるオランダ美術への広範な影響を見いだすことは困難であった。また、レンブラントの東洋趣味に関して検証する際、当初はオランダ国内の画家を対象とした図像資料の収集および比較検討を計画していたが、調査を進める過程でイタリアやドイツの画家たちの作品にも、オランダの画家達の作品に類似した東洋趣味のモィーフを確認することができ、当初想定していた検証対象について、再考する必要が生じた。そのため、オランダ美術とオランダ特有の東洋趣味の関係を検証する為に好適な「静物画」や交易で流入した「陶磁器」にも対象を拡大し、国外での資料調査を進めることとした。
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Research Products
(2 results)