2013 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における<身体障害>の誕生--医療と福祉の総合史に向けて
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13J02393
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤本 大士 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 医学史 / 医療・福祉 / 日本近世史 / 日本近代史 / 医療政策 / 鉱山労働者 / 障害者政策 |
Research Abstract |
2013年度は、本研究課題の基礎部分にあたる修士論文の研究内容について、学会での報告をおこなうと同時に、学会誌への投稿の準備をおこなった。 まず、これまでの医療史研究の動向をサーヴェイすることで、本研究課題の主題である「医療と福祉の総合史」の意義を確認した。『洋学』に投稿した論文「近世医療史研究の現在――民衆・公権力と医療」(採用決定済み、2014年5月刊行予定)は、近代日本医療史の研究動向と関連づけながら、これまでの近世日本医療史研究の動向を示した。同論文は、近世医療史では地域史の観点に即した在村医研究が盛んである一方、公的な医療策に注目する研究が手薄であることを指摘した。同時に近代医療史ではミシェル・フーコーの概念装置を援用して公権力と医療の関係性を問うものが多い反面、地域の医療史に関する研究が少ないことも指摘した。以上より、今後は両者の研究蓄積を踏まえた医療史研究が進められるべきであるという展望を示した。本研究課題でも、地域史の視点を取り入れた近代日本の医療史・福祉史をおこなう。 次に、具体的な研究対象である身体障害者については、近世・近代期を通じて彼らを多く生み出していた鉱山という場に着目し、鉱山労働者のための医療・恤救(社会福祉)制度について検討した。修士論文では江戸時代後期に秋田藩が鉱山労働者におこなった医療・恤救政策に着目したが、そこで得た知見を第114回日本医史学会・第41回日本歯科医史学会総会・学術大会(2013年5月)など3つの研究会で報告した。これら研究報告を通じ、近世期における鉱山労働者への医療・恤救政策にはかなりの程度地域差があることが明らかになった。このことを踏まえ、公権力が民衆のための医療や福祉をいつ、どのような契機で整備しはじめるかを検討することを2014年度の課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の基礎部分にあたる修士論文の研究内容について、予定通り、学会での報告および学会誌への投稿の準備をおこなうことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は本研究課題の主題である「医療と福祉の総合史」に向けて、資料調査さらにすすめ、より主題に即した研究をおこなっていく予定である。なお、具体的な研究対象である身体障害者と医療・福祉の関係について、それらに関連する史料があまり多く残っていないため、研究対象を適宜広げていく必要がある。
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